桜を見る会でも言えるのだが、招待した後援者の名簿など破棄する必要はなかった。

 安倍内閣のころから、公文書の類いを隠すのがなぜか当たり前のようになってしまった。たとえば、この間、収容中のスリランカ人女性が死亡した事件でも、出入国在留管理局は監視カメラのビデオ映像の開示を拒んでいる。とんでもないことだ。

 そこで、菅首相に会ったら何としても言いたい。今後、公文書の類いはすべて保存して、国会で開示を求められたら開示することに、抜本的に改革すべきである、と。

 実は日本では、公文書を破棄することが歴史的な伝統になっているようで、江藤淳という有名な学者は、日本では戦時中、戦前の公文書がすべて焼却されているので、それを調べるために何年も米国に留学していた。米国では、自国にとって都合の悪い公文書も、すべて保存されているからである。民主主義の国としては、それが当然だ。私は、菅首相に、そのように切り替えるべきだと進言するつもりである。

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数

週刊朝日  2021年7月2日号

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田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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