「本当にありがたいです。これからは貯金して、自分の葬式代ぐらい出せるようにしておかないとね」

 セーフティネット住宅とは、「住宅確保要配慮者」と言われる高齢者や障害者、生活困窮者、ひとり親世帯などの入居を拒まない住まいをいう。住宅確保要配慮者だけが入居できる住まいとして自治体に登録すると、建物の改修費や入居者の家賃などの一部が助成される。

 この制度に空き家を活用したのが、先に紹介した共生ハウス西池袋だ。

 オープンは昨年7月。現在は、宮本さんのほかに発達障害のある40代の男性と、同協会顧問の高橋英與(ひでよ)さん(72)の3人が暮らす。

「豊島区は空き家率が23区で最も高く、独居高齢者の割合も高い。(共生ハウスで)その両方を解決できると考えました」と渥美京子・同協会理事長(61)は言う。

 活用する空き家は不動産業者に紹介された。物件のオーナーが「社会の役に立つなら」と、住んでいなかった一軒家を貸してくれた。10年間の賃貸借契約を結び、1130万円かけてシェアハウスに改修した。改修費のうち150万円は豊島区からの助成だ。

 契約はオーナーと協会、協会と入居者とがそれぞれ結ぶ。協会は月々の賃料をオーナーに払い、入居者は協会に家賃を払う。これによりオーナー側は確実に賃料が得られ、協会は困窮者を支援できる。

 さらに協会がセーフティネット住宅として区に登録したことで、入居者1人当たり月4万円の家賃が補助される。

「おかげで池袋駅から徒歩10分ちょっとという好立地にもかかわらず、2万9千円という安値で提供できます」と渥美さん。入居の条件は豊島区民で月収が15万8千円以下であること、生活保護を受けていないこと、などだ。

■“事故物件”危惧 専用住宅わずか

 シェアハウスでは見ず知らずの人が一緒に暮らす。高橋さんは、運営を始めたばかりのこの住宅で入居者の利用状況を見るため、自ら住み込んでいる。

「生活する時間帯が違うので、お互いあまり関与していませんね。食事もバラバラで、自室で過ごすことが多い。一方で、玄関の鍵の使い方で困っていた宮本さんに発達障害のある男性が使い方を教えてあげたり、宮本さんが寮に勤めていたころは、僕らに仕事先から持ち帰った総菜をお裾分けしてくれたりなど、互助の関係もできてきています」

次のページ