──人生が延びて、配偶者に先立たれることも多くなりました。「没イチ」に苦しむ方もいます。

 女性は配偶者に先立たれても、切り替えて明るく生きていく方が多いようですが、ほとんどの男性が、なぜか妻よりも自分のほうが先に死ぬと思い込んで、先立たれてしまったとき、非常に落ち込むようですね。妻のほうが長生きするなんて、思い込みです。ある日突然先立たれることだってあります。そうなって茫然としても誰も助けてくれません。そうならないために、今日からでも懸命になってひとりで生きていく方法を模索することをおすすめします。食事を作れるようになる、任せっきりだった洗濯や食事などの家事を覚える、重要な書類や有価証券、印鑑、通帳などの保管場所を確認する。日常生活に必要なものすべてを把握して備える。準備をしているうちにひとりで生きていく覚悟もついてきます。

──最後に、先生と同じ年代を生きる読者へエールをお願いします。

 50代、60代、70代までは「野心」がある方がいます。仕事や生活での野心です。サラリーマンをやめてみると、その野心が生きがいだったんだと、懐かしく感じます。

 80代を超えて老人になると、生きがいが孫の成長だったり、庭木の咲いた花を楽しむことだったり、家に迷い込んできた野良の姿になってくる。それもいいじゃないですか。生きがいとは夢。たとえ小さな生きがいでも本人にとっては大きな希望になる。

 老いる意味とは「生きること」です。夢と希望を持ちながらお互い頑張っていきましょう。

(構成/本誌・工藤早春)

週刊朝日  2021年6月25日号