春風亭一之輔・落語家
春風亭一之輔・落語家
イラスト/もりいくすお
イラスト/もりいくすお

 落語家・春風亭一之輔氏が週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は「貴族」。

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 世の中にはいろんな『貴族』がありますね。『五輪貴族』だって。煌びやかなドレスと宝飾品で着飾った、物憂げな表情をしたザ・貴族ないでたちの五輪真弓さん。ではなく……IOCに関わるお偉いさんたちのことを揶揄(やゆ)して『五輪貴族』というようです。開催国に大挙してやってきて、高級ホテルに泊まり、日々パーティーに明け暮れ、飯を食いながらスポーツ観戦して、観光したり、ワーワー騒いで終わったらご機嫌で帰っていく人たち(ボンヤリした情報)。羨ましいですね。私も来世は五輪貴族に生まれたい。スポーツ、興味ないけど。ところで『五輪真弓』って字面。オリンピックのアーチェリー会場に貼ってある横断幕のキャッチフレーズみたいで、ちょっとカッコいいね。

『焼酎貴族トライアングル』。松田優作さんや石橋凌さんがCMに出演していた、めちゃくちゃ安い甲類焼酎です。親父がランニングにパンツ姿でよく飲んでました。ネーミングやCMのイメージと実際のユーザー層のギャップがたまりません。水と間違えて飲んでしまった私に親父が「ハハハ、それが『貴族の味』だ!」と言い放ち、「そんな奴ら、みんなギロチンのサビになれ!」と思ったものです。『五輪貴族』はトライアングル飲むかしら。高い酒よりよっぽど燃費がいいですよ、バッハさん。

『刑事貴族』。読み方は「でかきぞく」。雅楽の厳かな調べにのって、パトカーでなく牛車でカーチェイス。衣冠束帯で「おじゃるおじゃる」と言いながら、昼休みに屋上で蹴鞠をする刑事たち(タイトルからのイメージ)。1990年に舘ひろし・郷ひろみ主演で始まりましたが、いろんな理由で殉職を繰り返し、パート2で水谷豊主演、人気を得た刑事ドラマ。寺脇康文や高樹沙耶も出てたので、「相棒」の原型とも評されています。「アルマゲドン」より「刑事貴族」ですよ、パウンドさん!

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春風亭一之輔

春風亭一之輔

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/落語家。1978年、千葉県生まれ。得意ネタは初天神、粗忽の釘、笠碁、欠伸指南など。趣味は程をわきまえた飲酒、映画・芝居鑑賞、徒歩による散策、喫茶店めぐり、洗濯。この連載をまとめたエッセー集『いちのすけのまくら』『まくらが来りて笛を吹く』『まくらの森の満開の下』(朝日新聞出版)が絶賛発売中。ぜひ!

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