自分の考える幸福の形に固執して、行動をエスカレートさせていくリカを、どこかコミカルに可愛らしく演じられるのは、まさに高岡さんの魔性という才能のなせる業かもしれない。

「考えてみたら、もしかすると女性は誰もが小さなリカを胸の内に抱えているのかもしれないですよね。純愛モンスターに迫られて、最後に男性が情けない本音を漏らすことなんかも、ちょっとしたダークヒーロー的な側面もあったりして」

 実際、映画の中のリカは、タクシーを追い越すほどに速く走ったり、スパイダーマンのように壁に登ったり、超人的な身体能力を発揮する。子供の頃からバレエを習ってきた高岡さんだからこその身のこなしが鮮やかだ。

「バレエを習っていたことは、メリットしかありません。子供の頃はバレエを活かした役も多くいただき、写真撮影でも姿勢がいいとか、舞台をやらせていただくときは、立ち姿が奇麗だねと褒められます。映画で、スパイダーマンをオマージュしたシーンを撮るときも、バレエのときに身につけた体幹がものを言いました。どんな動きをしても体の軸がブレないので、バランスが取りやすいんです」

(菊地陽子 構成/長沢明)

高岡早紀(たかおか・さき)/1972年生まれ。神奈川県出身。88年デビュー。主な映画の出演作に、「忠臣蔵外伝 四谷怪談」(94年・深作欣二監督)、「モンスター」(2013年・大九明子監督)、「雪の華」(19年・橋本光二郎監督)、「ファーストラヴ」(21年・堤幸彦監督)など。18年にオールタイムベストアルバムをリリース。NHK連続テレビ小説「おかえりモネ」ではテレビ局の社会部気象班デスク・高村を演じる。

週刊朝日  2021年6月25日号より抜粋