当時築いたものはいまも財産になっている。

「全盛期は名古屋の店で、ヨン友さん40人と集まって、ヨン様の誕生日会を開きました。韓国の方角を見て『おめでとう』と言って、ケーキを食べた。ヨン様が映画やドラマに出演したときも、お祝いに集まりました」

 いまは人数が少なくなったものの、集まりは年に一度、20人くらいで続いているという。

「ここ数年、ヨン様の出演がないので昔ほどの熱量ではありません。みんなもヨン様のことはあまり話さず、年金や病気介護の話が多いですね。いい人たちに巡り合えました。旅立ったヨン友さんもいますが、葬儀で旦那さんが『ヨン様を愛した人生だった』と泣いていた。ヨン様と私たちは家族なのだと思います」

 ファンたちの熱さに定評があるのは、演歌歌手の氷川きよし。6月8日、東京・中野で開かれたコンサートに記者もチケットを買って参加してみると、会場にはシニア世代の女性たちが詰めかけていた。感染症対策のため掛け声はなしだったが、縦方向にペンライトを振り、拍手で盛り上げる。和服での演歌から一変、ボディースーツに網タイツという衣装でロック調の激しい曲目になると、観客は演歌の倍くらいのスピードでペンライトを激しく振って盛り上げる。終演後は、そこかしこに集まり感想を共有するファンたちの姿があった。会場にいた東京都在住の女性(56)は氷川のデビュー当時、茶髪でピアス、イケメンな風貌が意外でファンになった。

「最近イメチェンしたけど、いいじゃんと思っている。kiina(キーナ)が輝きだして、私はもっとルンルンです」

 キーナは氷川の愛称。近年、ジェンダーレスな衣装でロックも歌うようになった氷川を見て、美しいと思ったという。

「デビューから20年たって、自然体で生きているように感じる。『自分を信じて』と歌うキーナに励まされています」

 推し活を語る人たちは皆、幸せそうだった。第二の人生、推しと歩んでみるのもいいかも。(井上有紀子)

週刊朝日  2021年6月25日号