タレントの山田邦子さんは、リカちゃん人形を収集する“マニア”。その数は1千体以上にのぼるそうで、自宅には専用部屋もある。そんな人形たちを愛するあまり、「すでに遺書には、福島県の(工場を兼ねた人形の展示施設)『リカちゃんキャッスル』に寄付します、と書いてある」ほどだ。動画サイトのユーチューブ「クニチャンネル」では、お気に入りの人形ベスト10などを発信している。

 1967年の発売以降、6千万体超のリカちゃん人形を販売してきたタカラトミーによると、通常買っていく対象は99.9%が幼児。それが、女子高生になったハッシュタグリカちゃん(2020年10月発売)だと、購入者の10.8%が20歳以上になる。さらに、大人びた雰囲気のスタイリッシュリカちゃん(15年12月発売)は1万円以上と高額になり、大人がコレクションとして購入していくという。

「リタイア世代がマーティンの何十万円もするギターを買っていくこともある。購入単価が高く、高額消費につながっている」

 消費行動に詳しい未来ビジョン研究所の阪本節郎所長は話す。マーティンとは、世界中の有名アーティストが愛用するアコースティックギターの名器。いわずと知れたブランドは、愛好者らにとって垂涎(すいぜん)の的だ。こうした「ノスタルジー消費」は、経済的にゆとりのある世代が中心となって、大きなお金を動かす。

 企業側も商機とみる。

 ヤマハ音楽振興会の音楽教室には、シニア向けの歌コース「青春ポップス」がある。ヤマハのホームページなどによると、17年から全国展開し、10人前後のグループが一緒になって青春時代のヒット曲を歌う。教室のレパートリーにあるのは「心の旅」(チューリップ)や「恋のバカンス」(ザ・ピーナッツ)、「また逢う日まで」(尾崎紀世彦)、「あの時君は若かった」(ザ・スパイダース)などだ。

「中高年にとって若いときの音楽は安心感がある。当時のワクワクした感覚が戻って、若い気持ちになれる」(阪本さん)

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