そこに出てきたのが、公明党の提言だ。「原発に依存しない社会を目指す」という公明と「原発を最大限活用」という自民では、政策の方向性が真逆だ。菅総理は、公明党に太いパイプがある。「このタイミングで」公明党が提言をした裏には、この段階で原発推進を打ち出すことに慎重な菅氏への援護射撃だとの見方もある。与党内で意見が食い違えば、すぐに方針は決められないとして、時間稼ぎができるからだ。

 自民党原発推進派は、6月11日から英国で開催されるG7サミットで、菅総理に原発推進宣言をさせたかったようだが、公明の提言により、ギリギリのところで止まった。

 だが、菅総理が原発推進に反対かというとそうではない。9月の総裁選と秋の衆議院解散総選挙が終わるまで不人気政策は封印するという姑息な戦略があるだけだろう。

 仮に、今後も菅総理が原発新増設に慎重な態度を示し続けたとしても、国民は騙されてはいけない。選挙が終わる秋以降、菅総理が怒濤の原発推進政策に舵を切る可能性は十分ある。有権者は、それを念頭に置いて、今後の動きを注視すべきだ。

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。新刊『日本を壊した霞が関の弱い人たち 新・官僚の責任』(集英社)など

週刊朝日  2021年6月18日号

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古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『分断と凋落の日本』(日刊現代)など

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