「将来、介護で家族の手を煩わせないために脱毛したいという気持ちも理解できます。実際、高齢者施設に入所を希望される理由に、『家族だけでは排泄ケアが十分にできない』ことを挙げられる方も多いです。排泄ケアは1日に複数回、365日対応しなければならないため、働きながら対応することは難しい。1日数回ヘルパーさんを頼むだけではカバーしきれないことが多いのです」

 排泄ケアは、食事介助以上に労力を要するのだ。一方で、「プロに頼むのであれば脱毛をしていなくても何ら問題はない」と梶原さんは話す。

「看護師や介護スタッフは、陰毛があっても汚れを速やかに残さず清拭する訓練を受けていますから、不安を抱く必要はありません。それに排泄ケアを行う際は、必ず事前にお声がけをします。ご本人が恥ずかしい思いをしないように最大限の配慮をしながら、手伝える部分だけケアを行うのが一般的です」

 それよりも、尿漏れを防ぐためにパッドを重ねづけして、かえって漏れる、皮膚がかぶれるなど、素人判断で事態を悪化させないように注意してほしいと梶原さんは話す。

「多くの介護用品メーカーでは、おむつ交換や排泄ケアについての無料相談窓口を設けています。大人用おむつのパッケージにも、相談先の電話番号が書いてあったりしますので、わからないことがあれば気軽に連絡してみてください」(梶原さん)

 改めて感じるのは、介護サービスの質は、介護する側・される側のコミュニケーションの濃さや信頼関係によって大きく上下するということだ。一人で悩んで、包茎手術や脱毛を決めてしまう前に、誰に、どこまで介助を頼むのか、事前に具体的に考えておきたい。(ライター・澤田憲)

週刊朝日  2021年6月11日号より抜粋