ケアハウス入居を決めた場合、体験入居ができれば望ましいが、居室に余裕がない施設だとかなわないことも多いので、夏祭りや敬老会などの催しに参加してみて、全体の雰囲気を把握することをお勧めしたい。

 コロナ禍での施設入居のリスクとして、施設内にこもりがちになり「心身の衰えが進むのでは」と懸念する声もあるが、施設でも自宅でも、外出自粛の条件は変わらない。自宅でひきこもるより、たとえ出歩けなくても自然に囲まれたケアハウスで窓からの壮大な景色を楽しみ、常に人の気配を感じながら過ごす刺激が、老化防止に役立つという考え方もある。

 こうした施設が注目を集める一方、もちろん「自宅で最期まで」と希望する人もいる。ヘルパーやデイサービスのほか、小規模多機能施設、訪問診療、訪問リハビリ、訪問看護と、自宅での生活を援護してくれる制度も広がりを見せている。

 どちらにしても、自分が人生の最期をどう迎えたいのかに向き合うことは、終活の基本だ。

「ぎりぎりまで自宅で暮らし、一人での生活ができなくなったら施設入居を検討すればいい」と考えがちだが、年齢を重ねるにつれて、新しい情報への理解力や決断力は鈍り、多々ある高齢者施設のどれを選んだらいいかわからなくなる。さらに何カ所も見学すると、情報過多となり違いが判別できなくなることも。新たな住まいで、新しい人間関係を作るのも、若いほうがスムーズに運びやすいのは確かだ。

 また、子どもに施設選びを託すと、「子ども自身が通いやすい場所」や「親の年金でまかなえる利用料」などが最優先され、必ずしも自分の希望どおりになるとは限らない。自分の住まいは、体力や気力がしっかりしているときに、自らの意思で決めておきたい。

週刊朝日  2021年6月11日号