自動車メーカーは電動化を加速させている。
ホンダは4月、国内の自動車会社で初めて、40年までにすべての新車を電気自動車(EV)か燃料電池車(FCV)に切り替えると宣言した。エンジンで発電してモーターで駆動するハイブリッド車(HV)を含まず、完全な「脱エンジン」をめざしている。
エネルギーを大量に消費する輸送機関でありながら、電動化が難しいとされる航空機も、大手航空会社などが廃食用油など、さまざまな種類のバイオ原料を使ったジェット燃料の開発を進めている。
バイオ燃料をめぐっては、ユーグレナが3月、ミドリムシなどを原料とするジェット燃料で国際規格への適合が世界で初めて認められたと発表した。米石油大手シェブロンの関連会社などと共同で開発してきたもので、年内にもバイオ燃料を使った初飛行を計画する。
石炭火力発電所などで、燃やしてもCO2が出ないアンモニアを石炭と混ぜて燃焼させることでCO2排出量を減らす技術も注目されている。
ゴールドマン・サックス証券のシニアエコノミストの太田知宏さんは言う。
「各国が実質ゼロ目標を掲げているとはいえ、まだ達成にメドをつけた国はありません。目標を実現するためには、今までのやり方を大きく変えられるような技術やイノベーションが重要。企業だけでなく、政府レベルで人材や資金をそろえる必要がある」
脱炭素化を進めるなかで、日本経済を支えてきた産業基盤が崩れ、国際競争力を低下させては、本末転倒だ。官民での知恵が試されている。(本誌・池田正史)
※週刊朝日 2021年6月11日号より抜粋