子育てアドバイザーの小屋野(おやの)恵さんは、「パパママの不安の波に一緒に乗っからず、でーんと構えていてほしい」と話す。

「孫にごはんをあげようとスプーンをフーフーしたら、子どもから『虫歯菌がうつる』と言われるケースがあります。そんなとき、『昔は気にしなかった』などと否定すると、衝突しますよね。子育ての主役はパパとママ。大きな危険につながらなければ、『今はこうなんだね』と協力してあげてください」

 親としての経験を積むうち、情報を選択して「わが家のやり方」を見つけていく。回り道に思えても見守るのが、子育ての先輩の役目だという。

 冒頭の、ネントレに振り回された女性は、当時の自分をおおらかに見守ってくれた姑や母に感謝していると話す。

「偉そうに子育てマニュアルを渡しても、『はいはい』って受け取ってくれました。内心は『頭でっかちにならずにもっと子どものことを見たら』って感じていたでしょうね。今は、親のほうが正しかったなって思います」

 小屋野さんは、孫育てを手伝うポイントは「さじ加減とコミュニケーション」だと話す。

「相談されたら意見を言う、ヘルプを求められたら手伝うくらいでちょうどいい。手伝うときは、『○○しようと思うんだけど、どう?』『このやり方で大丈夫?』などと確認すれば、ありがた迷惑になることは防げます」

 そして、「じいじばあばにとってなにより大事な仕事」があるという。

「パパママは、慣れない育児に余裕をなくしがち。だからこそ、じいじばあばは孫をかわいがることに全力を注いでください。子どもは愛情を糧に育つもの。パパママにとっても、自分たちの子を愛してくれる存在は、大きな支えになるはずです」

 最後に、遠距離だったりコロナ禍だったりで、なかなか孫に会えない人におすすめの「愛情の伝え方」を教えてもらった。

「お互いの顔が見えるビデオ通話はいいですよね。絵本の朗読や歌、楽器の演奏などを音声データにして届ける人もいます。おもちゃや洋服などのモノを贈るときのポイントは、『気持ちが伝わればOK』と思うこと。子ども夫婦の好みやニーズとすれ違うこともあります。愛情が押しつけにならないよう、『万一よそに回されたりゴミ箱行きになったりしてもしょうがない』ぐらいの軽い気持ちでいれば、お互い気持ちよく過ごせそうですね」

 役に立たねばと焦らなくていい。「あなたたちを大事に思っている」という心が伝われば、それだけで立派な「いいじいじばあば」なのだ。(本誌・大谷百合絵)

週刊朝日  2021年6月11日号

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大谷百合絵

大谷百合絵

1995年、東京都生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。朝日新聞水戸総局で記者のキャリアをスタートした後、「週刊朝日」や「AERA dot.」編集部へ。“雑食系”記者として、身のまわりの「なぜ?」を追いかける。AERA dot.ポッドキャストのMC担当。

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