「『とっくり』という言い方が、お客様にも逆にかっこいいみたいな感じもあって、けっこう人気ありました」

 そして、初耳だが「けっこうかっこいいかも」と都子さんが反応した言葉が、「ランニング」だった。

「響きがいいですね、『ランニング』(笑)! 新商品の名前としても、なんだかアリな気もします」

 この「とっくり」や「ランニング」のように、死語の世界から、一周まわって新鮮な言葉として転生する可能性もあるようだ。

 世の中の流行事情に詳しいマーケティングコンサルタントの西川りゅうじん氏は、

ファッションの流行は、螺旋階段のように巡るもの。一回りすると、かつての流行が戻ってきますが、螺旋階段の上下で階が異なるように、同じようだけど、前の流行とは見える景色が少し変わってくるのが面白い点です」

 ファッション用語も時代に合わせて変化するものと分析する。

「服装はみんなと同じだと安心するのですが、没個性ではオシャレにはならない。人と少し異なることで、『何か違う。カッコいいな』と感じるのです。ファッション用語も同様で、響きが新しいと、同じアイテムを意味する言葉でも、呼び方次第で途端にオシャレに変わり、大ヒットすることがあります」

 近年は、ネットやSNSの発展も大きな影響があると西川氏は言う。

「友達や仲間、SNSのフォロワーのつながりによって、“ネットご近所”で面白がられていたことが一気に広がることも少なくありません。一般人の仲間内での言葉を有名人のインフルエンサーが拡散すると、従来の言葉が突然、死語化することもあり得るでしょう」

 西川氏は、文字だけでなく、アクセントにも注目する。

「『デニム』も現在、一般的な平たい発音になる前は、“デ”にアクセントを置いた言い方(『タオル』などに近い)でした。『スニーカー』や『スカート』も、“ニ”や“カ”が強い元の発音から、平たい言い方に変わりました」

 とはいえ、シニア世代はまったく気にすることはないと西川氏は言う。

次のページ