小泉進次郎環境相 (c)朝日新聞社
小泉進次郎環境相 (c)朝日新聞社
(週刊朝日2021年6月11日号より)
(週刊朝日2021年6月11日号より)
(週刊朝日2021年6月11日号より)
(週刊朝日2021年6月11日号より)

 脱炭素社会に向けた動きが本格化している。政府も2050年までに温室効果ガス排出量の「実質ゼロ」を打ち出した。実現には経済や社会の大転換が必要。負担となるのか好機となるのか。生き残りをかけた岐路に立つ。

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「この法的根拠をもって、今後の政策の継続性をしっかりと示すことができた。日本のなかで気候変動対策に与野党の対立がないということ。これは米国、欧州と大きく違う。今後どのような形に政治情勢がなっても、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量の実質ゼロ)2050年までの目標に向けて、与野党が全会一致で進めたということが大きな基盤になる」

 小泉進次郎環境相が、5月28日の閣議後会見で改正法の意義をこう強調した。まさに「総理のカーボンニュートラル宣言法律」(小泉環境相)でもある、改正地球温暖化対策推進法のことだ。

 同法は26日、参院本会議で全会一致で可決、成立した。温室効果ガスの排出量を50年までに実質ゼロにする目標が法律に明記されたことで、政権が代わってもこの目標が維持されることになった。

 脱炭素社会に向けた動きは、米国の政権交代で一気に加速した。

 バイデン氏が昨秋の大統領選に勝利。今年1月に就任するや、気候変動対策の国際枠組み「パリ協定」への復帰を表明した。

 日本も足並みをそろえるかのように、菅義偉首相が昨年10月の所信表明演説で「実質ゼロ」の目標を宣言。今年4月の気候変動サミットでは「30年度に13年度比46%削減」との目標を打ち出した。日本は「さらに50%の高みに向けて挑戦を続けていく」(菅首相)としていて、6月に英国で開かれる主要7カ国首脳会議(G7サミット)では、脱炭素化の実現へリーダーシップを発揮したい考えだ。

 世界の潮流とはいえ、新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、現場では不安や戸惑いも少なくない。

「新型コロナの影響で受注先の工事が止まり、21年3月期の売り上げはかなり落ち込みました。なかなか先が見通せず、経費削減や営業改革など利益をひねり出すのにせいいっぱい。もともと人手も足りていないので、『脱炭素』になんて、とてもじゃないけど手が回りません」

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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