「花崗岩は新型コロナウイルスに効く」は昨年の春ごろネットで広まった。一時はフリマアプリで、河原で拾った花崗岩が数千円で売買されていたが、明らかなデマ。医師で評論家の米山公啓氏は「コロナウイルスに特別な鉱物が効くという研究はありません。したがって花崗岩が効くということもありません」と、ズバリ断言した。

『うわさとは何か』という著書がある中央大学の松田美佐教授(社会情報学)は「黒マスクや090など、ネット上で広まる噂は、その真偽とは別に『それ、あるよね~』という共感が得られるものが多い」と言う。

「『そんなのエビデンスがない』というより、『それありそうな話だよね』と笑い合ったほうが仲間内でも会話が盛り上がる。だから面白ネタとして広まるわけです。ネットの噂の場合も同様ですが、その速度は口コミ以上に速い。多くの人が『いいね』するものは本当らしく見えてしまう傾向があるので、なおさらです」(松田教授)

 松田教授はさらに、新型コロナウイルスに関する“都市伝説”が多い理由として、米国の心理学者が1940年代に提唱した「噂の公式」を挙げる。噂の公式とは「R~i×a」という式で、噂の流布量(R)はその重要性(i)とあいまいさ(a)の積で求められるというものだ。

「コロナは命に関わることで重要性が高い一方、はっきりした性質は解明されていないため、情報はあいまい。戦時中や災害後の混乱期と同じように、噂が広まりやすくなるわけです」(松田教授)

 噂の本質を理解し、ニセ情報に振り回されないようにしたいものだ。(本誌・鈴木裕也)

週刊朝日  2021年6月11日号