預貯金や有価証券といった貯蓄の額も、東京(2542万円)、愛知(2333万円)、千葉(2207万円)が上位。下位は、少ないほうから沖縄(734万円)、青森(1013万円)、宮崎(1022万円)の順だった。

 こうした年収・貯蓄・負債の県庁所在地別ランキングは、当然ながら、企業が多く物価も高い大都市が上位を占める。

 そんななか、年収3位の富山は世帯の構成人数が比較的多いこともあるが、「元気な限り働く『富山の薬売り』の伝統があり、勤勉で粘り強い努力家が多い。ムダな出費をしない実利主義的な傾向もある」(矢野さん)という県民性が反映されているようだ。

 さらに、都道府県ごとに貯蓄や負債を比べてみたい。前述したように、単純な金額だけでは大都市を抱える地域が上位を占めやすいので、年間収入に対する割合を本誌編集部で独自に算出した。

 貯蓄にまわす割合では、愛知が355.1%とトップだった。貯蓄は年収の3.5倍にのぼる計算だ。

結婚式にお金をかける愛知の“ハデ婚”は今も健在。ほかの要因も考えられますが、ハデ婚をするにはそれなりの備えが必要です」

 世相や身近なデータなどをふまえて経済分析や予測をする三井住友DSアセットマネジメントの宅森昭吉チーフエコノミストは、愛知の県民性をこう分析した。

 前出の矢野さんも「名古屋では食べ物について『一安・二量・三味』という言葉があるように、値段にシビア。普段の生活は堅実派が多い」とする。

 住宅ローンなどの負債はどうか。金額そのものが最も少ないのは沖縄の236万円で、最も多い埼玉(968万円)の約4分の1、東京(790万円)の約3分の1だった。年収に対する割合でも、やはり沖縄が1位で年収の半分ほどにとどまった。

「地域の連帯性が強く、人間関係も親密。合理的で見えを張る人も少ないから、顔見知りの人に頼りやすいのでは」(矢野さん)、「周りの人同士で助け合う意識が強いし、収入や貯蓄、負債の額などデータで測れない豊かさがある」(宅森さん)などと指摘された。総務省がまとめた「持ち家住宅率」で最も低いことも、影響しているのかもしれない。(本誌・池田正史)

>>【後編/食費トップは“食い倒れ”「大阪」! 購入額「納豆」「みかん」は意外な結果】へ続く

週刊朝日  2021年6月4日号より抜粋

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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