ニッセイ基礎研究所の原田哲志准主任研究員は「コロナ禍で米国などが大規模な金融緩和を実施し、お金が株式市場などに流入しています。投資家が機会を求め、SPACにも期待が向けられています」と話す。

 楽天証券経済研究所チーフ・ストラテジストの窪田真之さんも「金余りで、より高いリスクをとるお金が増えています。例えば“ジャンク債”がいま、すごく買われています。SPACがお金を集めやすくなっているのではないか」と指摘する。

 ジャンク債とは格付けが低く、債務不履行のリスクが高い債券のこと。低金利時代だからこそ“ハイリスク・ハイリターン”のそんな債券が注目されているという。

 とくに米国では、金余りだけでなく、評価額10億ドル(約1千億円)以上の有望な未上場企業「ユニコーン」が多いことに注目したい。まさにSPACの買収対象となっていて、投資に火をつけているのだ。

「ユニコーンは世界に500社ほどある。このうち米国に約200社、中国に約100社、日本は数社ぐらいといわれている」。こう説明するのは、企業合併・買収(M&A)仲介業、FUNDBOOKの黒岩俊介取締役だ。

 前述のように、米国では20年から21年4月下旬までに上場したSPACは558件にのぼり、すでに世界のユニコーン数を上回る。このため今後、SPACの買収対象は「ユニコーン以外にも広がっていく」(黒岩さん)とみられる。

 いまのところ米国だけの話で日本に無関係かといえば、そうでもない。ソフトバンクグループの出資する企業がそれぞれ、SPACを通じて上場すると発表しているからだ。米シェアオフィス大手のウィーワーク、そして東南アジアの配車サービス大手、グラブ・ホールディングスだ。

 もちろん米国には、SPACの投資家を保護するルールがある。SPACは上場後に12~18カ月で買収を公表し、24カ月以内に買収を完了させなければならない。上場で集めた資金の約9割は信託され、2年以内に買収できなければ、投資家に利息をつけて資金を返済する取り決めだ。

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