上から、鳥獣戯画 甲巻、鳥獣戯画 乙巻、鳥獣戯画 丙巻
上から、鳥獣戯画 甲巻、鳥獣戯画 乙巻、鳥獣戯画 丙巻
上から、鳥獣戯画 丁巻、鳥獣戯画断簡(東博本)
上から、鳥獣戯画 丁巻、鳥獣戯画断簡(東博本)

「鳥獣戯画」は、猿や蛙、兎など擬人化された動物たちや人々が、愉快に躍動している絵巻だ。4月13日から東京・上野の東京国立博物館で開催されていた特別展「国宝 鳥獣戯画のすべて」では史上初めて、甲・乙・丙・丁全4巻の全場面を一挙公開。緊急事態宣言を受けて現在は休館中だが、原本ではすでに失われた場面をとどめる模本や、切れぎれになった断簡など、鳥獣戯画のすべてが集結することが話題になっていた。

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 鳥獣戯画を所蔵する京都・高山寺と中興の祖である明恵上人の秘密と魅力にも迫ることができるまたとない機会である。さらに、鳥獣戯画に登場する猿や蛙、兎などをモチーフにしたグッズも充実。いつでも身近に鳥獣戯画に触れることができそうだ。展覧会が再開したときは、鳥獣戯画に触れ、コロナ禍で鬱々とした気分を一気に吹き飛ばしたい。

鳥獣戯画 甲巻
平安時代・12世紀 京都・高山寺蔵
「鳥獣戯画」で一番多くの人が目にするのが甲巻で、ここには兎、猿、そして蛙などが登場する。この場面は兎や猿が水遊びしている。鹿の背に乗る兎や鼻をつまんで後ろ向きにダイブする兎にも注目

鳥獣戯画 乙巻
平安時代・12世紀 京都・高山寺蔵
乙巻には龍、貘(ばく)、獅子など空想上の動物が多く登場する。この場面は麒麟(きりん)と霊亀(れいき)が見られる。麒麟は徳の高い君主の治世に現れるとされる

鳥獣戯画 丙巻
平安~鎌倉時代・12~13世紀 京都・高山寺蔵
「鳥獣戯画」と名がつくが、丙巻には人物も描かれ、勝負事を楽しむ姿が目に留まる。耳に掛けた紐を引き合う「耳引き」と将棋の場面がある

鳥獣戯画 丁巻
鎌倉時代・13世紀 京都・高山寺蔵
甲・乙・丙巻と比べると人物は大ぶりで描線は太く、スピード感のある筆使いが特徴。曲芸、験競べ、法会、流鏑馬、田楽などが描かれている

鳥獣戯画断簡(東博本)
平安時代・12世紀 東京国立博物館蔵
断簡とは切れぎれになって残った書簡や文書のことで、これは甲巻の断簡の一つ。右から蛙、狐、猿、烏帽子姿の猿と蓮の傘を持つ蛙。祭礼の行列の様子が描かれているとみられる

週刊朝日  2021年5月28日号