昔からあった草花が姿を消し、突然大きな斑(ふ)のある百合が現れたり、新旧の入れかわりが激しくいつも新しい発見に驚かされる。

 同様に、軽井沢銀座を中心とする街も少しずつ変わってゆく。昨年は大正のころから外国人や避暑客に親しまれた大城レースが店を閉じた。淋しい!

 軽井沢を開いたのは欧米の宣教師達。そこが他の避暑地と違い、今も質素な板張りの夏の家が点在する。ショーハウス記念館やショー記念礼拝堂。私の山荘もそこから歩いて十五分ほどの、最初に開けた愛宕地区にある。

 そのショーハウスの隣にマンションらしき大きな建物が建設中である。私の所にも、急速な変化に反対の表明をという電話が知人から何本も入ってくる。

 コロナで軽井沢へ疎開する人が増え、地価が上がり、現在バブルだという。軽井沢らしさを失うことは自分の首を絞めることになると思うのだが。

下重暁子(しもじゅう・あきこ)/作家。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業後、NHKに入局。民放キャスターを経て、文筆活動に入る。主な著書に『家族という病』『明日死んでもいいための44のレッスン』ほか多数

週刊朝日  2021年5月28日号

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下重暁子

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下重暁子(しもじゅう・あきこ)/作家。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業後、NHKに入局。民放キャスターを経て、文筆活動に入る。この連載に加筆した『死は最後で最大のときめき』(朝日新書)が発売中

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