シヤチハタもうれしい悲鳴をあげた。オンライン上で印鑑を押せる電子決裁サービスは、新規登録者へ無料公開したところ、20年3~6月で27万件の登録。それまで月数千件だったというから驚異的な伸びだ。同社の売り上げに占める割合では、電子決裁サービスはまだ1割に満たないほどだが、5年後、10年後を見すえながら広げていきたいという。

「無料公開後も継続して利用するケースは多い。これからも顧客の求めに応えられるようにサービスの選択肢を広げたい」(同社広報担当者)

 明暗が分かれるなか、身近な商品では、どんなものが「勝ち組」だったのだろう。

 家電量販店ビックカメラにたずねると、空気清浄機をはじめ、ホットプレートや自動調理鍋、炭酸水メーカーなどが、コロナ禍の売れ筋だった。ホットプレートは例年、販売の増減が少ない定番商品。自宅で手軽にハイボールなどをつくれる炭酸水メーカーも売れた。

「居酒屋の営業時間が短くなったり在宅勤務で同僚と飲む機会が減ったりして、『家飲み』のニーズが高まった」(同社担当者)ことが背景だ。

 象印マホービンによると、ホットプレートの新商品の売り上げは、発売した20年8月から11月までで、従来品の前年同期からほぼ倍増したという。「子どもと一緒に料理ができる点などが好まれています」と同社広報担当者。

 そんな勢いを駆って3月、弁当専門店「象印銀白弁当」をJR新大阪駅に初出店させた。同社の高級炊飯器で炊いた「銀シャリ」と、明石産の海鮮や但馬牛などが味わえる弁当をテイクアウトできるもので、本格展開をねらう。

 まさに「宅配」「持ち帰り」はコロナ禍のキーワードとなった。ウーバーイーツの配達員が自転車を乗り回すのは、もはやおなじみの光景だ。

 店舗を急拡大しているのが、ギョーザの無人販売店「餃子の雪松」(本部・東京都国分寺市)。1パック36個入りで税込み1千円。店内の陳列ケースから取り出し、料金箱にお金を入れるという素朴なシステムだ。

 もともと群馬県の水上温泉にある中華食堂で評判だったレシピを継承したという。20年6月時点の約30店から、1年足らずで約140店に広げた。

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