炊飯器のふたは開けたままにして、「保温」のスイッチを入れる。ここでふたを閉めると、保温状態でも約70度まで上昇してしまうので注意したい。ほこりが入るのが気になる場合は、布巾などをかけておく。

 発酵に必要なのは8~10時間ほど。最初は1時間おきに1度かき混ぜる作業を3回程度くり返す。混ざり合った小豆とこうじの水分量がとても重要で、仕上がりの甘さを左右する。「ひたひたよりちょっと多め」(栗生さん)になるように水を加えるのがコツだ。

 軟らかい小豆と、こうじの粒が混ざった感じになれば、ほぼ完了となる。このままでもいいが、栗生さんは「練るほうが好き」なので、ひと手間加えているという。

「そのうえで、プラスチックの食品保存容器などに移し、粗熱がとれたら冷蔵庫に保存します。数日で食べ切りますが、それ以上になる場合は冷凍庫に入れると1カ月程度、日持ちします」(同)

 もちろん最初から、上手に仕上がらないこともあるだろう。甘みが足りない場合は、発酵が不十分なので、「こうじを増やすといい」(同)そうだ。小豆をゆでる際、ゆでこぼしを忘れると、渋みが残ってしまうこともあるという。

 できあがった発酵あんこを使って“王道”のぜんざいにしたり、バターを添えた小倉トーストにしたり、丸めたあんこ玉にきな粉をかけて食べたりと楽しみ方はさまざまだ。ちなみに、栗生さんは「少しの塩だけで炊いたかぼちゃに発酵あんこを添え、一緒に食べるのもおすすめ」だそうだ。

 インターネットの通信販売サイトを見ると、手づくり用の材料を詰め合わせた発酵あんこセットや、瓶に詰めた発酵あんこなども販売されている。手軽に入手できるようになってきた。

 ちなみに、発酵あんこは病院食にこそぴったりな食材と言えそうだが、そう簡単ではないそうだ。衛生管理が絶対となる病院では、加熱した後に保温で65度にするため、こうじ菌が死滅してしまうのだという。

「砂糖の甘みに慣れている人に、発酵あんこの自然の甘みは物足りなく感じるかもしれません。けれども、自然の甘みに慣れてくると、体調を知るバロメーターになります」

 栗生さんは改めて強調する。

 甘くて健康にいいからといって、くれぐれも食べすぎにはご注意を。(本誌・浅井秀樹)

週刊朝日  2021年5月21日号