五輪へアスリートの準備はどこまで進んでいるのか。各国の状況で練習できる環境も違うだろう。コンディションのわずかの差で勝負が決まる五輪。一発勝負とも言える中で野球のシーズンの試合と比べ、はるかに高い故障のリスクも伴う。開会式まで2カ月余、関係者は全力で準備を進めていると思うが、どこかで冷静な判断をしてもらいたいと思っている。

 五輪を開催するという前提で話をすれば、野球は6月には代表選手をある程度固めなければならない。その時にコンディションのいい選手を、しっかりと選べるか。新型コロナウイルスという見えない敵もおり、選手のコンディションも変化が生じるだろう。過去の実績にとらわれない選手選考をどれだけ行えるか。もし、これまでの試合で招集した選手のコンディションが悪ければ、選ぶべきではない。稲葉監督には厳しい目で選考をお願いしたい。

 スポーツの在り方が問われている。生きていくことに必死でスポーツどころではないと思う方も多くいる。アスリートの思い、ファンの方々の思い、日々変化する環境の中で、コロナ禍以前の日常がどれだけ幸せだったかと改めて感じる。

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝

週刊朝日  2021年5月21日号

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東尾修

東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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