監督 フロリアン・ゼレール/14日からTOHOシネマズ シャンテほか全国公開/97分 (c) NEW ZEALAND TRUST CORPORATION AS TRUSTEE FOR ELAROF CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION TRADEMARK FATHER LIMITED F COMME FILM CINE―@ ORANGE STUDIO 2020
監督 フロリアン・ゼレール/14日からTOHOシネマズ シャンテほか全国公開/97分 (c) NEW ZEALAND TRUST CORPORATION AS TRUSTEE FOR ELAROF CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION TRADEMARK FATHER LIMITED F COMME FILM CINE―@ ORANGE STUDIO 2020
監督 フロリアン・ゼレール/14日からTOHOシネマズ シャンテほか全国公開/97分 (c) NEW ZEALAND TRUST CORPORATION AS TRUSTEE FOR ELAROF CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION TRADEMARK FATHER LIMITED F COMME FILM CINE―@ ORANGE STUDIO 2020
監督 フロリアン・ゼレール/14日からTOHOシネマズ シャンテほか全国公開/97分 (c) NEW ZEALAND TRUST CORPORATION AS TRUSTEE FOR ELAROF CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION TRADEMARK FATHER LIMITED F COMME FILM CINE―@ ORANGE STUDIO 2020

「羊たちの沈黙」で最初のアカデミー賞主演男優賞を受賞してから29年。「ファーザー」に出演したアンソニー・ホプキンスは、先頃発表されたアカデミー賞で2度目の同賞を受賞。原作戯曲を手掛け、本作で長編監督デビューしたゼレールは、脚色賞を受賞した。

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 ロンドンで独り暮らしを送る81歳のアンソニー(アンソニー・ホプキンス)は、記憶が薄れ始めていたが、娘のアン(オリヴィア・コールマン)が手配する介護人を、「誰の助けもいらない」とことごとく拒否していた。

 そんな中、アンから新しい恋人とパリで暮らすと告げられショックを受ける。だが、それが事実なら、この家に突然現れ、アンと結婚して10年になると語るこの見知らぬ男は誰だ? なぜ彼はここが自分とアンの家だと主張するのか? ひょっとして財産を奪う気か? そしてアンソニーのもう一人の娘、最愛のルーシーはどこへ消えたのだ? 現実と幻想の境界が混濁していく中、最後にアンソニーが辿り着いた真実とは?

本作に対する映画評論家らの意見は?(★4つで満点)

■渡辺祥子(映画評論家)
評価:★★★★
認知症の老人の崩壊していく人格、心象風景を映像化しながら、彼の介護にあたる娘の悲しみ、困惑を重ねて認知症の実態を差し出す。変化する部屋の様子や深まる猜疑心など、原作戯曲作者の想像力と表現力が素晴らしい。

■大場正明(映画評論家)
評価:★★★★
冒頭から現実と幻想が複雑に入り組む迷宮に一気に引き込まれ、ホプキンスの凄まじい演技に心をかき乱される。舞台劇の設定を生かしつつ、映画的な効果を最大限に引き出し、よく練られた濃密なドラマに仕立てられている。

■LiLiCo(映画コメンテーター)
評価:★★★★
心がザワつきました。これはお父さんなのか、もしくは私が混乱しているのか? 迷いながらもわくわくしました。素晴らしい演技を魅せてくれたホプキンスを見守りながらも、ずっと脳裏に浮かんでいたのは自分の父でした。

■わたなべりんたろう(映画ライター)
評価:★★★★
一見すると複雑に見えるが、実はシンプルな構成。認知症の側から見た世界だからこその設定と構成の効果的な作用に唸る。人間のおかしみと哀しみをホプキンスが体現していて、彼でなければ演じられなかっただろう。

(構成/長沢明[+code])

週刊朝日  2021年5月21日号