そのままいけば一大大衆運動になったかもしれないうねりが、武装闘争をめぐる路線の違いから内ゲバ事件を生み、浅間山荘事件で終息を迎える。

 しかし、生き残った一人一人の情熱の残り火は今も燃え続ける。東大全共闘議長だった山本義隆(大手前高校で山崎の七歳上)が口を開く。

「それがあったから東大闘争にしろあれだけ広がったんだと思う」「10.8以降の俺たちにできる何かはないか」。そして、今の若者が同調主義になり笑わなくなったと憂う。

 18歳のままの山崎博昭の問いかけるものは? 2014年に10.8山崎博昭プロジェクトが発足し、2017年モニュメントの建碑式。映画『きみが死んだあとで』は今年4月からユーロスペースほかで順次全国公開されている。私自身も何か出来ることはないかと思い、この誌面を借りた。

下重暁子(しもじゅう・あきこ)/作家。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業後、NHKに入局。民放キャスターを経て、文筆活動に入る。主な著書に『家族という病』『極上の孤独』『人間の品性』ほか多数

週刊朝日  2021年5月21日号

著者プロフィールを見る
下重暁子

下重暁子

下重暁子(しもじゅう・あきこ)/作家。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業後、NHKに入局。民放キャスターを経て、文筆活動に入る。この連載に加筆した『死は最後で最大のときめき』(朝日新書)が発売中

下重暁子の記事一覧はこちら