本作の魅力の一つは、張り込み取材、編集者やデザイナーとの打ち合わせなど、雑誌づくりの臨場感に満ちている点だ。

「1995年は出版業界のピークの年でもありました。その後はネットに押されて、雑誌の売り上げは落ちていく。過ぎ去った雑誌の時代へのオマージュの意味もあります」

 一度書き上げたが、新型コロナウイルス禍の世相を反映し、完成させた。

「95年はウィンドウズ95が発売されたインターネットの勃興期ですが、昨年はテレワークなどネットの力を実感する年になりました。期せずして、二つの時代がつながった気がします」

『地の底のヤマ』と並ぶ私の代表作と思っています、と西村さんは満足そうに語った。(南陀楼綾繁)

週刊朝日  2021年5月7-14日合併号