新人の恐れぬ姿勢が先輩に勇気を与え、131得点はリーグトップ、31本塁打は巨人に次ぐ2位だ。

 (2)九回打ち切り

 近年の阪神の持ち味は充実した救援陣だ。昨季の救援陣の防御率はリーグ1位。セーブ王スアレス、セットアッパー岩崎優の2人は盤石だ。

 ここで鍵になるのが、「九回打ち切りルール」。今季は新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、延長戦が行われない。早めに自慢の中継ぎ投手を投入していける。

「早めに仕掛けるのは九回打ち切りではありえる。つぎこんでも遜色ない投手陣。惜しみなくいきたいという気持ち」と矢野燿大監督。

 先発陣も、開幕投手を務めた藤浪晋太郎は2軍落ちしたものの、全体的に安定している。結果としてチーム防御率2・77で堂々の1位だ。

 九回打ち切りには、もう一つの利点も。阪神は昨季まで失策数が3年連続12球団ワーストと、拙守が課題だった。

 今季は左翼手サンズ、一塁手マルテら「打力優先」の選手を、打席が九回までには回ってこなさそうとみるや、ベンチは次々と守備固めに代えていく。延長戦があったらできなかった策だ。

 (3)フロントも◎

 コロナに関連して、もう一つ、阪神にアドバンテージがあったのは、他球団と違い外国人選手がそろっていたことだろう。7本塁打の5番サンズ、6本塁打の3番マルテ、そしてチームトップの4勝をあげている先発のガンケルに、守護神スアレス。

 彼らの共通点は昨季も阪神でプレーしていたこと。コロナの影響で各球団とも新外国人の合流は遅れたが、球団は早めに再契約を済ませ、サンズらも1月中に来日、2月のキャンプからシーズンへの準備を積めた。

 即戦力主体のドラフト指名も成功した。新人は佐藤輝以外にも、ドラフト2位左腕・伊藤将司(JR東日本)が先発で2勝、同6位の中野拓夢(三菱自動車岡崎)が俊足好打で遊撃手のポジションを奪う勢いだ。

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「ほんまやったら道頓堀に何人も飛び込んでる」