国民はこぞって大きなマスクで顔を隠し、美男美女もあったものではありません。

 連日、コロナに感染した人の数が報告されていますが、人間は何事にもすぐ馴れて、ちょっとやそっとの数ではビクともしなくなりました。

 次から次へと、人間を困らせる不都合を生み出すのは、神仏でしょうか。悪魔でしょうか。神仏は、人間の思い上がりをたしなめる為に、コロナなど、うっとうしいものをばらまくのでしょうが、ちょっとした手加減で、自分の方にコロナが押し流れて来ないともかぎらないので、気が気でないことでしょうね。

 これから先の人生も、何が起こるか楽しみにしてらっしゃるようですが、私はもう、この世は飽き飽きした上、連日、躰がだるく痛く、腰は曲がり、脚はにぶく、頭の動きも日々刻々衰えて、つくづく、もう生きているのが厭になっています。そのくせ、食欲ばかりは衰えず、日に二食はしっかり食べているし、お酒も冷やで一合余りは、夜の食事に呑んでいます。二合以上呑むと、酔って調子が狂うので、一合余りで控えています。呑み友達は不要です。独り酒ほど、美味しいものはありません。自分で作った日本酒の冷やを呑みますが、あっさりとして美味で、目下これ以上に、口に合う酒は、ありません。

 酒の肴は、全国の珍味を、私の小説の愛読者さんたちが送って下さり、不自由をしたことはありません。

 お酒の好きな面だけはヨコオさんより、私の方が幸せですね。

 子どもの時、ヨコオさんは友達がいなくて独り遊びしたようだけど、それは私も似ています。ただし、私は小学校に上がってからは、成績優秀で、通信簿(ヨコオさんの頃は何と言った?)に甲ばかり、つまり六年間「全甲」でした。

 ヨコオさんの頃は、1から5まで、数字で成績を表していたのですね。

 世の中に出て、学校の成績など、何の役にもたたないことを、嫌と言う程味わいました。世の中でひとかどになるには、本来、本人に備わっている才能だけです。一に才能、二に才能、三、四も才能、死ぬまで才能です。

 ヨコオさんも私も、才能のおかげで百近くまでこの世でウロウロしてるのですよ。

 才能不滅! 才能万歳!

週刊朝日  2021年5月7-14日合併号