ヤマザキマリさん (撮影/掛祥葉子)
ヤマザキマリさん (撮影/掛祥葉子)

 高齢者へ向けた、新型コロナウイルスのワクチン接種がようやく始まった。漫画家のヤマザキマリさんは自己判断、自己管理の意識の低い日本でのワクチン接種に対する不安を明かす。

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 ワクチン接種できるタイミングが来たら、打つつもりです。子どものときから打ってきているワクチン注射と同じ感覚。過度な期待もしないけれど、今のところは受けるに越したことはないかなと思っています。

 イタリアと日本を行き来する生活を続けてきましたが、コロナによってイタリアに帰れない生活が続いています。1カ月ほど前に、イタリアに住む夫がアストラゼネカのワクチンを打ちました。夫もワクチンを打つことに迷いはなく、不安が少しでも軽減されるなら打ちたいという思い。夫も、夫の家族や同僚も、みんなワクチンを打った後、2日間は39度ぐらいの発熱がありました。高熱を出しながらも「ワクチンを打った」と報告してきた声は意気揚々としていて、ワクチンの最大のメリットは、心の不安を少しでも軽減できることだと実感しました。私の周りでは、熱が出るなどの副反応は受け入れている人が多い印象です。

 そもそもイタリアは日本に比べて、自己判断、自己管理の意識がずっと強い。ワクチンにしても、自主的に動かないと接種できない。必然的に高い意識を持つことになります。それに比べると日本は、自分で判断するのではなく、お上からの指示を待ったり、人の言うことに倣う人が多い。そうした中で社会にはびこる同調圧力は怖いものがあります。ワクチンにしても、「受けないといけない」という同調圧力が生まれ、「自粛警察」の次は「ワクチン警察」が出てきそうです。

 日本政府のコロナ対策に関する説明は、線引きがはっきりしていなくて曖昧。圧倒的に説明不足だと感じます。一連の国の対応に関しては「受け取る側で判断しろ」という感じで、そこに責任回避的な風潮が色濃く見えます。だからこそ、私たちは自分なりに判断するための情報をもっと知ろうとして、考えないといけない。今、まさにそれが問われているのでは。

(構成/本誌・松岡かすみ)

週刊朝日  2021年5月7-14日号

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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