ホテルニューグランド ザ・カフェ スパゲッティ ナポリタン(撮影/写真部・小黒冴夏)
ホテルニューグランド ザ・カフェ スパゲッティ ナポリタン(撮影/写真部・小黒冴夏)
ホテルニューグランド ザ・カフェ/神奈川県横浜市中区山下町10/新型コロナウイルスまん延防止等重点措置に基づき、当面の間、営業時間は10:00~20:00 (L.O. 19:00) (撮影/写真部・小黒冴夏)
ホテルニューグランド ザ・カフェ/神奈川県横浜市中区山下町10/新型コロナウイルスまん延防止等重点措置に基づき、当面の間、営業時間は10:00~20:00 (L.O. 19:00) (撮影/写真部・小黒冴夏)

 4月29日は「昭和の日」という国民の祝日だけでなく「ナポリタンの日」。「昭和の日」→「昭和の食べ物」→と言えば、ナポリタン! なんだそう。トマトケチャップを発売して100年以上の歴史のあるカゴメ株式会社が、この日を「ナポリタンの日」に制定し一般社団法人日本記念日協会より、正式な記念日として認定を受けた。

 そんなナポリタンの日に、著名人がその人生において最も記憶に残る食を紹介する連載「人生の晩餐」から「ナポリタン」を紹介する。それは、俳優・黒沢年雄さんの「ホテルニューグランド ザ・カフェ」の「スパゲッティ ナポリタン」だ!

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 僕は男4兄弟の長男として、横浜で育ちました。16歳の時、働き者のおふくろが病気で亡くなったので、弟たちを食べさせるために高校を辞めて働きに出た。昼間は港近くの貨物会社で働いて、夜はキャバレーのボーイをやったりして。朝から晩まで仕事を掛け持ちしていました。それを知った会社の上司が「黒沢、お前頑張ってるな」と言って、ご馳走してくれたのがこのナポリタンでした。

 当時はホテルの本館5階に眺めのいい「スターライトグリル」というレストランがありました。まだ10代の若造には、そりゃあ敷居が高かったですよ。緊張しながら生まれてはじめて食べたスパゲッティの味を今でも忘れません。何しろ今から60年近く前の話ですから、それまで洋食なんて口にしたことがなくて。麺と言えばラーメンばかり食べていましたから、真っ赤なトマトソースは衝撃的なおいしさでしたね。これをきっかけに、ホテルがあまりにも気に入ったものだから、一番下の弟を就職させたくらいです(笑)。

(取材・文/沖村かなみ)
※週刊朝日  2019年11月1日号

【ホテルニューグランド ザ・カフェ スパゲッティ ナポリタン】
 昭和2年、西洋式ホテルとして港町・横浜に開業。「スパゲッティ ナポリタン」は同ホテル発祥のメニュー。戦後、米軍の占領下で進駐軍文化の影響を受けて生まれた。2代目料理長の入江茂忠氏が、当時米兵が食べていたトマトケチャップ味のスパゲッティをアレンジすべく、生、水煮、ペーストの3種類のトマトを合わせてひと手間かけたソースを考案。麺は前日にゆで置くことで、もちっとした食感に、バターのコクを加えてまろやかな味に仕上げた/「ホテルニューグランド ザ・カフェ」神奈川県横浜市中区山下町10