古賀茂明さん
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日米首脳会談後の記者会見に臨む菅義偉首相(左)とバイデン大統領
日米首脳会談後の記者会見に臨む菅義偉首相(左)とバイデン大統領

 菅義偉総理が訪米を終えて帰国した。

【写真】「ジョー&ヨシ」の仲とはいったい…

 朝日新聞デジタルによれば、菅総理は同行記者団に、「たたき上げの政治家ということで、共通点がいっぱいある」「家族を大事にする方で、執務室に写真がいっぱいあった」「私と似たような感じも受けた。バイデン氏もそう思っているようだ」と語り、さらに、菅氏は話に夢中で出されたハンバーガーに手をつけられなかったと言って、「一挙に打ち解けるというか、緊張がまったくなく出来た。これからも付き合い続けていける」と手応えを語ったとのことだ。

 各社ともほぼ同じような提灯記事を書いているが、よく考えてほしい。通訳を介しての20分は、実質10分。ほとんど何も話さないで終わったということだ。

 現に、記事を見ると、菅総理の話の中に、バイデン氏の言葉は出てこない。たたき上げの政治家で共通点がいっぱいという話など、いずれも単なる菅氏の思い、推測、感想でしかない。

 20分のハンバーガー会談というのもあまりに慌ただしい。30分程度には延びると予定していたのに、話が弾まず20分で切り上げというのが真相ではないか。

「緊張がまったくなく」というのもポイントだ。普通は、出されたハンバーガーを見て、「私はハンバーガーが大好き」くらいのおべんちゃらを言って、思い切り大きな口を開けて頬張り、うまい!と叫ぶくらいのことはするだろう。実際は、緊張でハンバーガーのことなど考える余裕もなかったのだろう。

 実は、菅氏が訪米前にテレビ東京のWBSのインタビューで、間違って、「緊張」していると口走った。キャスターがびっくりして、聞き返したので、失態が目立ってしまった。私も見ていて、本当にびっくりした。

 バイデン氏に会う菅総理は、大親分に会いに行く下っ端組員みたいなもの。緊張したと言うと、それがバレるので、あえて、「緊張」しなかったと強調したのだろう。

 今回の訪米で報じられなかったことで、もう一つ残念なことがある。

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古賀茂明

古賀茂明

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『分断と凋落の日本』(日刊現代)など

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