「それは抜歯です。歯を抜いた際に口腔(こうくう)内の菌が血液中に入り、脊椎で炎症を起こすのです。また足のケガや下痢の後に起こることもあります」(大谷医師)

 もう一つはがんの骨転移。乳がんや肺がん、腎がんなどで起こりやすい。

「もちろん、がん患者さんもそうでない方と同じで、腰痛の原因で圧倒的に多いのは非特異的腰痛です。ですので、過度に心配する必要はないと思います。ただ、がんの手術を受けた方は、経過観察で定期的に検査を受けていると思うので、気になる腰痛があれば、主治医に相談されることをお勧めします」(同)

 がんの骨転移で起こる腰や背中の痛みは、安静時にも痛み、また、どの姿勢をとっても痛みが和らがない、というのが特徴だ。こうした痛みは非特異的腰痛と共通する。

 こういう場合、多くの人は、まずはマッサージやシップなどで対応するだろう。「それでもかまいませんが、痛みが1~3カ月続くようなら、やはり一度、医療機関を受診したほうがいい」と鈴木医師。がん緩和医としての視点からこう話す。

「がんの骨転移があっても、今は放射線治療も確立され、痛みをとるよい薬も出てきています。進行によっては抗がん剤による積極的な治療を受けることもできます」

 危険な腰痛を早期に見つけるためには、医師や看護師にしっかり症状を伝えることが大切だ。

「場所に関しては、指でさせるかどうかも重要な情報です。あとは動かすと痛いのか、安静時でも痛いのか、熱や腹痛など、腰や背中の痛み以外の症状なども、病気を特定するために貴重な情報になります」(大谷医師)

 腰痛があったときにどこを受診すればよいか。鈴木医師が助言する。

「重い荷物を持った、転んだなどきっかけがある場合は整形外科を。ほかに症状がある場合は、かかりつけの医師、あるいは総合的な診療ができる内科を受診するのがいいと思います。そこから専門の診療科を紹介してもらってください」

(本誌・山内リカ)

週刊朝日  2021年4月30日号