所沢市と和光市は、リクルート住まいカンパニーが3月にまとめた「SUUMO(スーモ)住みたい街(駅)ランキング2021関東版」で、前回の調査から順位が急浮上した街のトップ10に入った。コロナ後の移住先として注目が集まる郊外都市の一つだ。

 地盤ネットHDの担当者によると、災害リスクをみるうえで「地名もヒントになる」という。

「サンズイの字が入るなど水にまつわる地名なら、もともと湿地だったり、水場を埋め立ててできたりするなど、水に関わりの深い土地の可能性が高い。反対に、各地に地名が残る『国分寺』は、かつて建設地を選ぶ際に水害の恐れがない場所が選ばれていた。周囲に古い神社や古墳、遺跡が残っているようなところは地盤が強いケースが少なくありません」

 実際に移住に踏み切る際に注意すべきことは何か。夫婦で東京暮らしを続け、4月中に鎌倉に引っ越す予定の中島ゆきさん(44)が心がけたのは、移住を考えている街に「お試し」で行ったり、住んでみたりすることだという。

「事前のイメージと完全にマッチするようなことは普通ありません。いきなり住宅を購入するのではなく、まずは賃貸でいいから住んでみて、実際の状況を確かめるべき」

 2年前に瀬戸内海をのぞむ香川県の街に移り住んだ30代男性も、今の移住先に落ち着くまで本や鳥取、岩手など全国各地に足を運び、現地の様子を見て回った。

「やりがいのある仕事に出合えたことが決め手になりました。観光サイトの作成からイベントの準備まで業務の幅が広く、地元の人たちと一緒に仕事をする機会も多い。地方暮らしは人付き合いが大変と言われることもありますが、自分にとっては仕事を通じ仲間意識を感じられて楽しい」

 ふるさと回帰支援センターの高橋公理事長は、移住の成功に最低限必要な10カ条の心構えを挙げる。

「どんな土地にも特有の気候や文化、社会がある。地域になじむためには、自分から溶け込んでいく努力も必要。地元のことをよく知る『師匠』を作るのも一つの手では。アバウトでいいから焦らず、不便さを楽しむ気持ちで新しい関係や生活を築いていくとよいでしょう」

 結局、カギを握るのは自分の気持ちや行動のようだ。今回紹介した災害リスクも参考に、じっくり検討してみてほしい。(本誌・池田正史)

週刊朝日  2021年4月30日号より抜粋

著者プロフィールを見る
池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

池田正史の記事一覧はこちら