林:光石さんは何かのインタビューで、「脇役というのは、自分は二枚目の主役じゃありませんと宣言することです」みたいなことをおっしゃっていましたね。

光石:僕らの世代のホンモノの主役の方って、たとえば高倉健さんみたいな方を言うのであって、僕がやる主役なんていうのは、たまたま画面にいっぱい映るので、便宜上いちばん最初に名前が書いてあるというだけなんです。ふつうの小市民をやってるんで、僕らにとっての本当のスターさんがやる主役とは違うという意味で、そう言ったんだと思います。

林:でも、脇役の方の立ち位置っていいなと思いますよ。主役の方はすぐに、視聴率や観客動員数がどうだとか言われるし、スキャンダルは大々的に取り上げられるし、人気が下がるとああだこうだ言われるし。それに比べると、脇役の方は自由自在で楽しそうですよね。

光石:まあそうですよね。

林:樹木希林さんが「脇役ぐらいいいものはない。いろいろかけもちできるし、お金は入るし、時間も節約できるし」とおっしゃったのを聞いたことがあります。

光石:ハハハハ、そうですか。僕らは希林さんほど自由自在にはやれませんけどね。

林:光石さんはデビュー映画で主役をなさったんでしょう?

光石:そうですね。「博多っ子純情」(78年)という映画でしたね。

林:大ベストセラーの漫画が原作ですよね。

光石:そうです。たまたま友達に誘われてオーディションに行ったら受かったんですけど、それがなかったら絶対に役者になんかなってないです。その撮影現場がほんとに楽しかったんですよ。田舎の少年がいきなり映画の現場に放り込まれて、楽しくないわけがないですよね。その体験が今につながってるような感じですね。

林:お父さん役はどなただったんですか。

光石:小池朝雄さんです。お母さん役が春川ますみさんで。

林:名優のお二人だったんですね。「博多っ子純情」への出演をきっかけに、このまま芸能界に行けちゃいそうだな、という感じだったんですか。

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