避けがたいかに見える老害化の波だが、対策はある。まずは次の三つの方法を実践してみよう。

【1】自分を客観的に見つめ直す

 正しい自己認識はすべての基本だ。前出の平松氏はこう話す。

「高齢の方の中には、自分が高齢者だという意識がない一方で、周囲に対しては『あの人は年だから』と年をとっていることに敏感になる人が多くいます。そんなとき、『自分は周囲から今どう見られているのか』と客観的な視点で考えられるようになれば、老害化を予防する第一歩になります」

【2】手と心を動かして新情報を咀嚼する

 新しい情報が脳に定着しないことについては、次のようなテクニックで対処できるという。

「言葉で聞くだけなど、実体験を伴わない新しい情報は頭に残りにくい。高齢者がよく『腑に落ちない』と言うのはこれが理由です。実際に手を動かした経験や、感情を揺り動かされた経験は強く記憶に残るので、メモをとったり、心を動かすドラマやドキュメンタリー番組を見たりすることをお勧めします」(平松氏)

 たとえば若者向けの最新のドラマを見て心を動かされたら、理解できずに「けしからん」と思っていた“令和の価値観”がスッと腑に落ちるかもしれない。

【3】「日常」を崩して前頭葉の衰えを防ぐ

 最後に、感情をつかさどる前頭葉の衰えを防ぐには、こんな工夫がある。

「日常生活が代わり映えせずルーティン化しているなら要注意です。前頭葉はクリエーティブな行動によって維持されるので、行きつけの店しか行かないとか、散歩のコースは常に同じという人は危険。行ったことのない店に挑戦してみたり、いつもと違う道を通ってみたりと、少しでも変化を加えることが重要です」(和田氏)

 感情が抑えられなくなるなどの老害の“症状”は、認知症とも共通する部分がある。前出の平松氏は「老害化予防は認知症の予防にもつながる」と話す。小さな気づきと生活の変化を取り入れて、体も心も健康で過ごしたい。(本誌・秦正理)

週刊朝日  2021年4月30日号

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秦正理

秦正理

ニュース週刊誌「AERA」記者。増刊「甲子園」の編集を週刊朝日時代から長年担当中。高校野球、バスケットボール、五輪など、スポーツを中心に増刊の編集にも携わっています。

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