田原総一朗・ジャーナリスト (c)朝日新聞社
田原総一朗・ジャーナリスト (c)朝日新聞社
イラスト/ウノ・カマキリ
イラスト/ウノ・カマキリ

 ジャーナリストの田原総一朗氏は、日米会談を前に菅義偉首相へ直接、進言した。

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 この原稿が読者に読まれるのは、菅義偉首相とバイデン米大統領の会談が終わった後になる。

 両者の会談は日米だけでなく、世界中が強い関心を持って見守っていただろう。

 トランプ前大統領は、米国の従来の対中政策は大きな失敗だったとして、中国に対する露骨な敵視政策を展開した。

 中国が経済的にも軍事的にも米国を上回る脅威が具体的になったからである。

 そして、トランプ氏はこれまでの大統領が口にしなかった「世界のことはどうでもよい。米国さえよければいいのだ」と公然と言い放ち、それに大半の米国民が強く同意した。それは米国民が中国の脅威を実感したからだ。

 だが、トランプ氏のあまりにも民主主義を無視したやり方が反発を呼び、大統領選挙では民主党のバイデン氏が勝利した。

 とはいえ、バイデン大統領も中国の脅威は強く感じていて、最も怖い競争相手だと言い切っている。

 米中対立は厳しいままである。

 その間に立って、日本はどのように振る舞えばよいのか。

 日米は同盟国で、米国との信頼関係は強めなければならないが、中国は隣国であり、経済も少なからず依存し合っている。

 バイデン大統領から、もしも中国が台湾を武力攻撃し、米国が台湾を守るために戦ったとき、日本はどうするか、と問われれば、菅首相は、安倍前内閣の安保制度改革にのっとって戦う、と答えざるを得ないだろう。

 だが、そうした事態にならないために日本がどのようなことができるのか。このあたりは公然化されないだろうが、両者で相当詰め合うはずである。

 さらに、新疆ウイグル自治区のウイグル族らに対する中国共産党の過酷な人権蹂躙(じゅうりん)に対して、米国はジェノサイドだとして、日本にも制裁を科すことを求めているが、日本はこれまで態度をあいまいにしたままだ。おそらくバイデン大統領は改めて制裁を求めるだろうが、菅首相はどのように対応するだろうか。

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田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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