8日、男子200メートル個人メドレーで、この種目で代表内定を決めている瀬戸大也と、萩野がデッドヒート。2位の萩野も派遣標準記録をクリアし、個人種目でも五輪代表内定を決めた。

「萩野と瀬戸、両選手と決勝のあとに話をしてきたんですが、自由形で競るといつも伸びないんですよ。二人とも1分56秒台をめざしていたと思いますが、よく力を出してくれたと思います。瀬戸選手の復調ぶりもすごいし、萩野も個人種目で代表内定をとれたというのは心からうれしいし、よくここまで身体面、技術面だけでなく、精神面も戻ってきてくれたな、と思います。二人でインタビューを受けている姿を見ると個人メドレーはこうだなと思うところがありますし、若い世代が二人のレベルに到達できるように、頑張ってもらいたいなと思いました」

 10日、競技を終えて大会を総括した。

「(男子平泳ぎで)金メダル候補の渡辺一平選手が代表に入れないなど、波乱のあった選考会だったと思います。まだ内示の前ですが、五輪代表は予想していた35人くらいより若干少ないかなという感じです。強化してきたリレーは、男子が松元(克央)選手、中村(克)選手が実力を発揮して予想通り。女子は池江選手の頑張りが予想以上だったので、本番までに記録を上げれば十分戦える内容で、いけるんじゃないかと思っています。

 個人種目で目を引いたのは、男子200メートル自由形を日本新で制した松元選手、男子200メートル平泳ぎで世界記録に迫った佐藤翔馬選手。二人ともオリンピックは初めてで、女子個人メドレーの大橋(悠依)選手もそうですが、初代表で金メダル、メダルを狙うということになるので、コーチ陣だけでなく、ベテランの入江(陵介)選手らの協力も得て、しっかり頑張っていきたいと思います。

 今回の大会は、世界のコーチが結果や映像を見て、おどろいた種目もあったはずです。そういった種目は金メダルにつなげられるように、まだまだの種目はしっかりレベルを上げていきたい。選手団で複数の金メダル、そして全員決勝進出というのも大きな目標の一つです。一人ひとりの頑張りが結果につながるので、ミーティングを重ねて意識を高めていきたい」

(構成/本誌・堀井正明)

平井伯昌(ひらい・のりまさ)/競泳日本代表ヘッドコーチ、日本水泳連盟競泳委員長。1963年生まれ、東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。86年に東京スイミングセンター入社。2013年から東洋大学水泳部監督。同大学法学部教授。『バケる人に育てる──勝負できる人材をつくる50の法則』(朝日新聞出版)など著書多数

週刊朝日  2021年4月23日号

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平井伯昌(ひらい・のりまさ)/東京五輪競泳日本代表ヘッドコーチ。1963年生まれ、東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。86年に東京スイミングセンター入社。2013年から東洋大学水泳部監督。同大学法学部教授。『バケる人に育てる』(小社刊)など著書多数

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