東尾修
東尾修
昨年11月の日本シリーズ第1戦で先発したソフトバンクの千賀 (c)朝日新聞社
昨年11月の日本シリーズ第1戦で先発したソフトバンクの千賀 (c)朝日新聞社

 西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、投手の危険度が年々増していると指摘する。

【写真】昨年11月の日本シリーズ第1戦で先発したソフトバンクの千賀選手

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 野球がどんどん進化していくのはうれしい半面、怖いなと思う出来事が起こった。ソフトバンクの千賀滉大が4月6日の日本ハム戦で六回途中に左足首を痛めて緊急降板した。両ふくらはぎのコンディション不良からの復帰登板でアクシデントが襲ったものだ。

 5‐0で迎えた六回1死。それまで快投を演じてきた千賀に、日本ハム・渡辺の打球は千賀の顔付近へのライナーとなった。何とか出したグラブにボールは収まったが、体重を支えていた左足スパイクが、マウンドの硬い赤土に突き刺さったままバランスを崩した。左足首をひねって、歩くことすらできずに、担架でベンチ裏へと運ばれた。

 今、プロ野球の本拠球場のマウンドは、どこも傾斜がきつく、硬く作られている。スパイクの歯がひっかかることは多い。通常の投球動作であれば、いつも行っている体の使い方をしているので多少バランスを崩しても問題はないが、不意な動きでスパイクがひっかかってしまうと、こういうアクシデントは起きてしまう。

 打者はバットの品質向上に加え、スピードとパワーが格段に増し、打球速度は、おそらく私の現役時代とは、はるかに違うだろう。それに対処する投手は生身の体。ピッチャーライナーへの危険は本当に大きい。

 試合前に工藤公康監督は、今季の千賀の投球フォームが「一塁側に早く倒れるように見える」と指摘していたという。力投型の投手は、目いっぱい腕を振るから、一瞬、目を切ることが多い。その一瞬であったり、工藤監督の言う、少しでも体が流れてしまうと守備動作に入るまでに差が出てしまう。

 大事に至らないことを祈るばかりだが、マウンドの改良、道具の進化、打者の成長に対応する投手の危険度は本当に年々増していると痛感した。

 同じヒヤッとしたことといえば、メジャーリーグのエンゼルス・大谷翔平である。米国時間4月4日(日本時間5日)のホワイトソックス戦に「2番・投手」で出場。本塁打を打ったのも驚いたが、投手として本塁のカバーに入った際に走者アブレイユと交錯。足をすくわれる形となった。翌5日(日本時間6日)のアストロズ戦では代打で出場し、死球。2日とも私の体の動きが止まったよ。

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東尾修

東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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