冒頭で紹介した、介護福祉の学校に通っていた真知子さんは常々、「自分の親をこの施設に入れたいと思うケアを」と学んできたといい、先の特養で働く未知さんも、一人ひとりの入居者とじっくり向き合いたいという思いがあった。

 ただ、いずれも現場では、理想と現実とのギャップを感じている。

 前出の石本さんが指摘した「措置時代」のやり方が残っている職員も含め、介護に携わる上での教育は重要だ。

 しかし、先の介護労働安定センターの調査で、職員の採用時研修の受講の有無について、「受けた」と答えたのは正規職員で48.9%、非正規職員は39.7%と、いずれも半数を下回っていた。

 前出のオンブズマンの担当者は、研修の重要性についてこう指摘する。

「特養には重度の入居者もいるので、職員には介護技術だけでなく、心のケアもより高度なものが求められます。そうしたものも含めた研修が十分でなければ、介護サービスの質は悪くなります」

 利用者の見極める力も必要だが、現場の変革にも期待したい。(本誌・大崎百紀)

週刊朝日  2021年4月23日号