特養で20年間看護師として働く幸子さん(仮名)は、理想的な特養での看護の鍵は「観察力」と話す。

「特養の看護師にとって大事なのは入居者の日々の体調変化に気を配り、先手を打つこと。そこには高い経験値が求められます。経験不足の施設看護師は、それが後手にまわってしまいます。その結果、褥瘡([じょくそう]=寝たきりや座りっぱなしによる皮膚の壊死[えし])などのトラブルに追われるのです」

 できる限り希望に近いサービスを受けられる特養に入るためには、口コミを利用したり、事前に情報収集したりして選ぶしかない。結城教授が語気を強める。

「どこの施設でも同じような介護サービスが受けられると考えるのは、やめたほうがいいでしょう。しっかり自分でリサーチしなければ、後で泣きを見ることにもなります」

 前出の真知子さんがこう話す。

「家族側にも良い施設を見極めるスキルのようなものは必要だと思います。すべての希望をかなえてくれる施設は存在しません。入居者の方も多様なので、集団ケアとなる特養では、すべてのご家族の意向をかなえるのは難しいからです」

 病気が心配という人は医療対応について詳しく確認しよう。前出の看護師の幸子さんが話す。

「早期に病院に連れていってくれるところもあれば、そうでないところもある。病気が不安な人は、医療連携が厚いところを選ぶほうが安心。治療の場にどうやってつなぐかは施設によってすごく違うからです。入所前には、実際の看護態勢について、直接施設に行って話を聞くことが大切です」

 いろいろと調べた上で、それでももし、ブラックと感じる特養に入居してしまった場合はどうしたらいいのか。

「もうだめだと思ったら、すぐに退去したほうがいいです」(前出の結城教授)

 その場合は次の施設を探さなければならないが、そのためには、次が見つかるまで、在宅介護ができるような準備をしておこう。

 施設の介護サービスの方針はそれぞれだが、自立支援に力を入れる施設もある。

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