※写真はイメージです (GettyImages)
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特養を利用する前に備えておくこと (週刊朝日2021年4月23日号より)
特養を利用する前に備えておくこと (週刊朝日2021年4月23日号より)
施設見学時のチェックポイント (週刊朝日2021年4月23日号より)
施設見学時のチェックポイント (週刊朝日2021年4月23日号より)

 公的施設である特別養護老人ホーム(特養)は安さが魅力だ。しかし、中には、職員による暴言や暴力があったり、医療・看護態勢が十分でなかったりする「危険」な施設もある。大事な家族や自身を守るためにも、安心・安全な特養を選ぶ目を養おう。見分けるポイントを専門家に聞いた。

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 都内の介護福祉士の養成校に通っていた真知子さん(仮名・40代)は数年前、介護実習で特養を訪問し、目にした光景に驚いた。介護の現場が、学校で学ぶものとは大きく違ったからだ。

「食事の介助中に『あーぅあーぅ』と食べ物や移動を求める利用者さん(車椅子)の目の前で、いわゆる『ボス』的な存在の女性介護職員が『あたし、うるさい男って嫌いなんだよねー。よくしゃべる男って無理』と。周りの職員はただ笑って聞いていました」

 利用者と話すときは、いつも小ばかにしたり、見下したりしているようで、尊厳が軽視されているように見えたという。

「寝たきりの人の前で、『この人、わかんないから大丈夫』とか『全員寝たきりのほうが自分のペースで仕事できるから楽なんだよね』なんてつぶやいて……」

 こんな場面も見かけた。食事中にオムツ内で排便してしまった利用者に対し、気づいた職員が、「あぁ○○さん、うんこしてる!」と叫んだ。

「他の職員は『えーマジか』と反応していました」

「ブラック」な行為も目にした。介護職員による摘便(肛門=こうもんから指を入れて便をかき出す行為)だ。医療行為のため医師や看護師などの資格がないとできないはずだが、「職員が手袋をつけ、人さし指に軟膏(なんこう)を塗り、何も言わずに肛門に指をつっこんでいました」。

 ほかにも、体の硬直がある重度の認知症の利用者を介護実習の「サンプル」のように扱っていた。ベッドであっちにころころ、こっちにころころとなされるがままに転がされる入居者を見て、「これをご家族が見たらどんな思いになるのだろうか、といたたまれなくなりました」(真知子さん)。

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