──三田さんにお聞きしたいのですが、これまで当事者たちの肉声をつなげたこのような映画はどうしてつくられてこなかったのでしょうか?

三田:これは代島さんだから撮れたんだと思いますね。代島さんは人を「枠組み」で捉えず、映画の冒頭で自分の顔のところに遺影をかざすように非常に個人的なアプローチで、被写体と交流し交感しながら撮っている。だから生身の肉声が伝わってくる。そういう意味で最初の映画ではないかと思います。

代島:映画は人が話す場面だけでつないでいるんですが、編集していて不思議と顔だけ見ていても飽きなかったんですね。

三田:通常なら短く切るものを、切らない。長くしゃべってもらっているからこそ伝わる「語り手の存在感」。小説では描けない、肉声ならではのドキュメントの重さを体感しました。

(構成/朝山実)

週刊朝日  2021年4月16日号