坂本龍一、矢野顕子、小原礼、向井滋春、本多俊之、清水靖晃ら名うてのミュージシャンを支えながらのドラミングは、「うねり」「凄み」「厚さ」「軽み」の連続でさしずめリズムの万華鏡。「彼ほど僕ら若手に慕われた人はいなかった」と佐橋君。「とことん面倒見が良く、話も面白かった」

 元々フレンチホルンの奏者で、N響を受けるがあえなく不合格。落ち込みながら友人の家で初めてジャズを聴くと、シンバルや小太鼓をたった一人で叩いているじゃないか!と面白がってドラマーになった。育ての親は芸子。源氏名が「ポンタ」で、それがそのままニックネームになったという。

 そういえば、テレビの人気番組『いかすバンド天国』で沖縄・石垣島からやってきたBEGINがグランドイカ天キングになった際(89年)、「おめでとう。素晴らしかった。今度(ワイヤー)ブラシで参加させてくれ」と審査員席で優しくコメントした笑顔は忘れられない。

 村上龍さんとキューバに行き、招聘するバンドのドラマーの技に驚いたことがある。

「上手過ぎる。F1が公道を走っているようなものだ」と龍さんが漏らしていたが、ポンタさんも日本の音楽界という公道をF1並みの馬力で駆け抜け、この世を去った。

延江浩(のぶえ・ひろし)/1958年、東京都生まれ。慶大卒。TFM「村上RADIO」ゼネラルプロデューサー。国文学研究資料館・文化庁共催「ないじぇる芸術共創ラボ」委員。小説現代新人賞、ABU(アジア太平洋放送連合)賞ドキュメンタリー部門グランプリ、日本放送文化大賞グランプリ、ギャラクシー大賞など受賞

週刊朝日  2021年4月16日号

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延江浩

延江浩

延江浩(のぶえ・ひろし)/1958年、東京都生まれ。慶大卒。TFM「村上RADIO」ゼネラルプロデューサー、作家。小説現代新人賞、アジア太平洋放送連合賞ドキュメンタリー部門グランプリ、日本放送文化大賞グランプリ、ギャラクシー大賞、放送文化基金最優秀賞、毎日芸術賞など受賞。新刊「J」(幻冬舎)が好評発売中

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