半身浴の場合は、温熱作用を得るために単純に全身浴の2倍の時間がかかると考えてよい。そのため入浴時間は、「40度で、延べ20分」が目安となる。いずれにせよ、科学的根拠に基づき、数値で入浴をコントロールすることが大切だ。

 一方で、入浴の前後に意識したいこともある。

「まずはやはりヒートショック予防のために、脱衣室や浴室を温めておくこと。室温は最低18度、できれば20度以上が理想です。浴室を温めるときは、熱いシャワーを高い位置から2~3分ほどかけ流しておくだけでも2~3度は違ってきます」

 また、脱水を防ぐために、入浴前にはコップ1杯ほどの水分を補給したい。水道水でも構わないが、ミネラル入りの麦茶やイオン飲料、牛乳などを飲むと、より水分の吸収率がよく効果的だ。

「それから湯につかる前に、手桶で10杯くらい掛け湯をしてください。コツは、手足などの末端から体の中心に向かって、少しずつお湯をかけていくこと。いきなり熱湯に入ると、血圧が急激に上昇してヒートショックや心筋梗塞などを起こしやすくなるので、体を湯に慣らしてから入るようにしましょう」

 お風呂から出るときは、転倒に注意だ。

「湯で体が温まると血管が広がるため、通常時よりも10~20くらい血圧が下がります。その状態で急に立ち上がると、頭に血が回らずひどい立ちくらみが起こる危険性がある。浴槽から立ち上がるときは、手すりや浴槽のへりにつかまって、ゆっくり立ち上がるようにしてください」

 めまいや失神を防ぐためには、立ち上がる前に顔や手を冷やすのも効果的だ。早坂氏によると、冷水を含ませてしぼったタオルで顔を拭いたり、冷たい壁に両手を1分ほどつけたりするだけでも、交感神経が刺激されて血圧が上がる。万一、転倒した場合に備えて、床にはクッションマットを敷いておくと、より安全だ。

「もし立ちくらみを感じたら、すぐに頭を下げて。血液の流れが元に戻り、意識を失わずに済みます」

 どれも習慣化することで、安心して日々の疲れを癒やしたい。(ライター・澤田憲)

週刊朝日  2021年4月16日号