大手2社の姿勢には、かなり温度差を感じる。カインズは自主回収の発表後、原因究明が終わるまで「石綿不検出」とされたものを含め、珪藻土製品すべての販売を中止している。ニトリは、石綿不検出とされた珪藻土製品の販売は継続。「外部検査機関において問題がないという検査結果が出ております」との表示を貼って安全性をうたう。

 極めつきはテレビCMだ。ニトリは1月から、石綿検出には一切触れない「お詫(わ)びと回収」という15秒CMを開始。時期をほぼ同じくして、ペットボトルを再利用してカーペットをつくっているタイ工場の30秒CMも流した。

「自主回収のCMでさえ石綿を隠し、その2倍の時間で環境にやさしい企業だと宣伝。石綿問題をなかったことにしようとしている」と、利用者の反発を招いている。

 ニトリ広報部はこれに対し、自主回収のCMに関して「多くの放映枠を確保しやすい15秒CMとし、放映数を多くすることをめざしました」。石綿に触れなかったのは、回収に特化した結果だと弁明した。「カーペットのCMに比べ、約1.5倍多く放映」しているといい、「二つ(のCM)をセットとして放映する計画を立てた事実はございません」と強調した。

 石綿被害者の支援活動に取り組む「中皮腫・じん肺・アスベストセンター」所長の名取雄司医師は指摘する。

「本来入ってはならないものに石綿が含まれ、それを削ることが仕様に含まれていたことに問題がある。削れば一定の曝露(ばくろ)があり、発がんリスクは上がる。“ゼロリスク”はあり得ない。業者の対応は不適切で間違っています。また、科学的な説明も足りていない。(人体への)影響が少ないというのであれば、信頼できる試験機関などで少なくとも10回以上、飛散実験をするなどして、きちんとリスクを調べたうえで公表すべきです」

 昨年末の記者会見で、ニトリを展開するニトリホールディングスの似鳥昭雄会長は、「お客様第一を掲げるニトリとしてあってはならない」と謝罪した。あれから3カ月が経つというのに、お客様である多くの利用者が、不安を払拭(ふっしょく)するどころか、不信感を募らせている。関係各社の姿勢が改めて問われている。(ジャーナリスト・井部正之)

週刊朝日  2021年4月16日号