冒頭の男性は、ニトリのバスマットを使っていた。ニトリは回収対象が23製品、約355万個と今回の騒動で最も多い。男性は子どもの健康被害が心配になって同社の担当窓口へ相談。「上司から連絡します」と言われ、後日になって「厚生労働省から通常使用ではとくに問題ないと見解をもらっている」という趣旨だけが告げられた。

 九州在住の40代男性も問い合わせると、同じような回答だった。男性は約10年前に“血液のがん”とされる悪性リンパ腫を発症していただけに、怒りが収まらない。

「治療後5年以上経っているので“完治”となっていますが、抗がん剤で免疫力が落ちている。医師から『発がんリスクが高いから気をつけるように』と言われています。製品の説明書通りに削って吸わされたのに、この対応では話にならない」

 カインズでも同様の対応と批判が出ている。

 たしかに、厚労省の発表には「通常の使い方で使用している限りは石綿が飛散するおそれはなく、健康上の問題を生じさせるおそれはありません」との文言がある。ただし、「削ったり割ったりした場合など破損したときには飛散するおそれがありますので、調査中の製品をお持ちの方も含め、破損しないようにお願いします」と注記されている。

 同省としてはむしろ、「削っても問題ないと説明したことはない。我々はあくまで削ったり破損したりしないよう求めています。削るなどした場合に、100%健康影響がないと断言しているわけでもない」(化学物質対策課)ということだ。

 各社に問いただした。

 すると、ニトリ広報部は「厚労省にご相談したうえで、バスマットをたまにやすりで削り、少量飛散した石綿を吸い込んだとしても、それだけが原因で病気を発症することは通常想定されていない、とお答えしております」と説明した。

 カインズ広報部は「削ることもメンテナンスの一つなので、誤解を招く表現でした。決してそういう言い方はできないはずですので、カスタマーサービスにも改めて伝えます」と、非を認めつつ答えた。

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