ニトリ東京本部
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安全性を強調して珪藻土製品が売られているニトリの店内
安全性を強調して珪藻土製品が売られているニトリの店内
バスマットに付属する紙やすり
バスマットに付属する紙やすり

 昨年以降、アスベスト(石綿)混入が発覚し、自主回収が続くバスマットなどの珪藻土(けいそうど)製品。取り扱っていたのは50社余りに及び、利用者は将来の健康被害への不安を抱える。1月にオンライン記事で警鐘を鳴らした本誌にも、関係企業に不信感を募らせる声が相次いだ。

【写真】安全性を強調して珪藻土製品が売られているニトリの店内

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「珪藻土バスマットを2歳の息子といっしょに、何度か工作感覚で削っていました。石綿を吸っているんじゃないか、と。子どものことが本当に心配です……」

 埼玉県に住む男性(40)は、昨年12月下旬の報道で、家で使っていたバスマットが石綿を含むものと知った。説明書には、吸水性が落ちても紙やすりで表面を削れば、使い続けられると記されていた。

 石綿は、髪の毛の5千分の1という細い繊維状の鉱物。熱や摩擦、酸、アルカリに強く、耐久性も高いため、かつて約1千万トン輸入され、工業製品や建材などに使われた。だが、発がん性がきわめて高く、吸ってから数十年後に中皮腫(肺や心臓などの膜にできるがん)や、肺がんなどを発症する可能性があることが明らかになり、“静かな時限爆弾”と呼ばれる。

 日本では2006年9月、重量の0.1%を超えて含まれる製品の使用や輸入、販売などを原則禁止。12年3月に全面禁止された。それでも、過去の石綿使用により、中皮腫だけで毎年約1500人が死亡。肺がんなどを含めると、年2万人超が亡くなっていると推計されている。

 禁止された発がん物質が、日用品から見つかったのは昨年11月以降。大阪府貝塚市が「ふるさと納税」の返礼品にした堀木工所(同市)製のバスマットを皮切りに、家具大手ニトリや、ホームセンター大手カインズなど55社で販売のバスマットやコースターなど計44製品から石綿を検出した(4月1日時点)。公表された自主回収の数は計66製品、約362万個(「石綿不検出」とされた同一工場の製品を含む)にのぼる。

 珪藻土製品を扱っていた企業のほとんどは、汚れたり、吸水性が落ちたりしたら紙やすりなどで削るよう促していた。紙やすりを付属品にしていたケースもあった。石綿を飛散させ、それを吸ってしまうリスクを高めるような行為を“奨励”していたわけだ。

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