「『楽しくなければテレビじゃない』というキャッチフレーズをかかげ、漫才ブーム以降に若者世代の支持を得ていきます。『ひょうきん族』は、フジテレビが大きく躍進するきっかけになった番組といえます」(西条教授)

 これまでのバラエティーと違い、アナウンサーを“ひょうきんアナウンサー”、ディレクターは“ひょうきんディレクター”と銘打ち、それまで「裏方」だった存在にスポットを当てスター化させた。西条教授は言う。

「とにかくノリと勢いで、おもしろいと思ったことはすぐやっちゃう。スタッフたちが登場するようになったのもそれが反映されたものですね。ノリでやっている楽しさ、そこから派生するタレントやスタッフの裏話や楽屋オチが出てくるのも新鮮でした。これはのちの、とんねるずの番組の笑いなどにもつながっていきます。スタッフたちの笑い声が流れるようになったのも、『ひょうきん族』からです。みんなで楽しんで作っているという空気が画面を通して視聴者に伝わってきたのだと思います」

「オレたちひょうきん族」が放送されるまでの土曜夜8時のテレビ界は、高視聴率で“オバケ番組”と称された「8時だョ!全員集合」一強の時代が続いていた。その裏番組として登場した「ひょうきん族」は、放送を重ねるごとに視聴率も上昇、二つの人気バラエティーがしのぎを削るさまは、世間では「土8戦争」とも呼ばれ注目された。80年代なかばに視聴率が「全員集合」を追い越したことも当時の話題を集めた。

 二つの番組は、そのつくりにも大きな違いがあったと西条教授は語る。

「入念なリハーサルを繰り返し、ひたすらコントを作り込んでいくスタイルの『全員集合』とは逆のやり方です。すぐに本番にのぞみ、その場のノリを最優先する。『全員集合』をフィクションの笑いとするならば、『ひょうきん族』はノンフィクションの笑いです。NGすらも笑いに変えていきました」

 番組内でのNGを笑いに変える錬金術的手法は、ひとつの人気コーナーを誕生させる。収録中にNGを出した出演者やスタッフを、教会の懺悔室をイメージしたセットに呼び、「懺悔」させる。神父に扮した横澤プロデューサーの「心ゆくまで懺悔をなさい」という声に促され、NGを出したことに許しを請う。壁の十字架にはりつけにされた白塗りの「神様」が、両手で○か×のジェスチャーをしてその懺悔は裁定される。×のときには、頭上から水が降ってきて、全身びしょぬれになる。

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