林:石井さんがずっとプロデューサーとして君臨してたおかげで、若い女性の脚本家にもチャンスが来たわけですね。

橋田:そうです。あの方の貢献は大きいです。私は何も貢献してません。私はNHKの仕事のほうが多かったですからね。

林:大河ドラマも三つですか。「春日局」と「いのち」と……。

橋田:「おんな太閤記」ですね。

林:あのころ40%ぐらい視聴率とってたんですよね。

橋田:そうですね。「春日局」は大河ドラマで上から3番目の平均視聴率だとか言ってました。

林:「結婚したおかげでホームドラマが書けた」とおっしゃってますね。

橋田:ホームドラマが書けたのは、お姑さんもいたし、小姑さんもいたし、勉強もしたからですけど、「渡る世間は鬼ばかり」で嫁・姑とかいろいろ書けるのは、家族がないからです。だから「私をモデルにした」なんて文句を言われることもないし、どんなことでも書けるんです。

林:ご親戚もいらっしゃらないんですか?

橋田:主人のほうの縁は全部切りました。私のほうは誰もいないです。一人っ子だし。母のほうの人とも、父のほうの人とも付き合ってないです。私は一人がいいんです。何も思い残すことなく死ねるし、「死んじゃイヤ」と言う人もいないし。

林:でも、お友達がいらっしゃるでしょう。石井ふく子さんとか。

橋田:石井さんは、仕事のお友達ですね。私、友達はつくらないんです。電話も、向こうからかかってくるのは受けますけど、こっちから電話かけたことないです。もう誰とも付き合いたくない。面倒くさい。

林:「面倒くさい」って言えたらいいですけど……。

橋田:お友達って何ですか? 拝見すると、真理子さんはお友達と一緒にどこかに行ったりなさってますけど、私はベタッとしたのがイヤなんですよね。お友達がいないというのは、すごくさわやかです。

林:そこまで言いきれたら素晴らしいですよ……。

橋田:「それは負け惜しみよ。あなたは友達をつくれる人じゃない。意地が悪いから」ってよく言われますけど、でも、ほんとに欲しくないんです。私は一人っ子だったから、可哀想に思って母がうちに友達を呼ぶんです。お菓子やノートや鉛筆を母がくれるから、みんな寄ってくるんですけど、そうやって母が私を抱え込むのがイヤで、18歳で家を出ちゃって、それからずっと一人で暮らしてきました。誰からもお金をもらわないで、自分で稼いで、日本女子大へも自分のお金で行きましたし、そのあと早稲田も行きました。

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