橋田壽賀子1925年、韓国の現ソウル生まれ。早稲田大学卒業後、松竹へ入社し、脚本部を経て、独立。代表作にNHK朝の連続テレビ小説「おしん」など多数(撮影/谷本結利、協力/ステーキハウスはまだ)
橋田壽賀子
1925年、韓国の現ソウル生まれ。早稲田大学卒業後、松竹へ入社し、脚本部を経て、独立。代表作にNHK朝の連続テレビ小説「おしん」など多数(撮影/谷本結利、協力/ステーキハウスはまだ)

 脚本家の橋田壽賀子さんが4日、亡くなった。95歳だった。「渡る世間は鬼ばかり」「おしん」など数々の名作ドラマを手掛けた橋田さん。年齢を重ねても精力的に活動してきたことで知られるが、その秘訣について、過去に週刊朝日のインタビューで語っていた。記事を再録する。

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 健康志向が高まるなか、とかく敬遠されがちな「肉料理」。しかし米寿を過ぎてもなお、第一線で活躍している女性たちには“肉食系”という共通点があった。血液検査データもばっちり正常範囲。好みの食べ方や肉がもたらす効果をもとに、長寿の秘訣を探る。脚本家・橋田壽賀子さんの場合は……。

 私は刺し身も嫌いだし、やはり魚より肉が好きですね。鶏肉、豚肉、牛肉どれも好きですが、ひき肉のようにしてハンバーグなど料理してもらったり、焼き豚(チャーシュー)とすき焼きが大好きで、それ用の肉はいつも冷蔵庫に入れてあります。

 20年以上前にがんで亡くなった主人がステーキがとても好きで毎日食べていたので、私も肉食系になったのかもしれません。サラダに入れるハムなども合計すると毎日100グラムは肉を食べています。

 肉を食べるときは野菜も一緒に食べるようにしています。赤や黄色のピーマンやトマトのサラダやジャコを少しかけた大根おろしも消化にいいので、たくさん食べます。

 基本的には一日2食しか食べませんが、朝はトレーニングに行く前に黒豆に梅干し3個だけしか口にしません。同じ姿勢で脚本を書くことが多いので、体が固まってしまう。午前中にジムでパーソナルトレーニングを週に3回。おなかの下に大きなボールを入れて柔軟運動やスクワット20回、ストレッチ体操など1時間たっぷり体を動かします。

 以前は自宅近くのプールで毎朝700メートルを背泳ぎしていましたが、そのプールがなくなったので、今は週に一度市民プールで千メートル泳いでいます。筋肉をつけないと血液の循環が悪くなるそうで、運動は医者からも勧められています。

 毎月1回、熱海の国際医療福祉大学熱海病院でメディカルクラブに入って全身をチェックしていますが、血液検査の数値も問題のあるところはなし。健康体で担当医からは、「もう少し体重を減らしたほうが腰への負担も減りますよ」と言われますが、中性脂肪(95)も悪玉コレステロール値(68)も正常値で、食べ物について注意されたことは一度もありません。

 昼はひき肉を使ったハンバーグなど料理に野菜。夜は午後8時ごろに大好きなすき焼きとか肉料理が多い。食事は時間をかけて、よく噛むように心がけています。自宅で一人で食事するのが好きで、食べながらふっと放映中のTBS連続ドラマ「なるようになるさ。」の脚本アイデアが浮かんできたりして楽しい。日本全体が暗いニュースが多いので、底抜けに明るくて温かいドラマにしているつもりです。

 前回ドラマ「渡る世間は鬼ばかり」はとても長く続いたので、1シリーズの脚本を書き終えると「飛鳥」で世界一周の船旅を自分へのご褒美にしていましたが、船でも肉料理は必ずありました。

 最近は午後の11時半から脚本を書き始めて午前3時ごろまで仕事をする悪い癖がついてしまいました。肉食が長寿にいいとは考えたこともありませんでしたが、私のまわりをみても元気な人は肉を食べています。

 肉を食べると筋肉がつくそうです。私ももう88歳。老人になると転倒することが多いそうですが、幸い私は元気で、転んだことはありません。

※週刊朝日  2013年9月6日号を再録 
※年齢や肩書は当時のまま