「4、5月と順調に伸び、秋までまるでバブルのようでした。これは、ローン減税の“駆け込み”の影響と見ています。皆さん、『13年』を使いたいから契約を急いだんです」

 1度あることは2度ある。となると、期限が延びて「1%」も危うくなった今年は、さらなる駆け込みが起きるのか。

「1月に2回目の緊急事態宣言が出ましたが、都内の住宅展示場の来場者は上昇傾向でした。住宅市場は例年、1、5、9月に動きます。ゴールデンウィーク以降に、活発に動き始めるとみています」(小野社長)

 それではマンションはどうか。先の井出さんは、戸建てほどには盛り上がらないと見る。

「というのも、マンション市場の主力プレーヤーは不動産投資をする富裕層になっているからです。23区内の新築だと価格は8千万円レベル。年収1千万円の人でも、手が届きにくい値段です」

 投資家は居住用として購入しないため、そもそも住宅ローン減税を使えない。住む人でも、短・中期での売却を狙う人は、別の税制を活用するケースが多いという。

 一方、普通に住む目的で買う人たちは、先に例に出した“パワーカップル”らに絞られる。30代を中心にニーズはあるとされるが、先のFPの有田さんが言う。

「私の所に相談に来る人でも、7千万~8千万円台のマンションを買われる人がけっこういます。おふたりの世帯年収が高くて、貯金もかなり持っているイメージです。家計状況から住宅に使える金額をアドバイスするのですが、『これで買える範囲で買います』という方がほとんどです」

 どうやら、戸建てを中心に一定の駆け込みはありそうだ。先の小野社長によると、

「戸建てだと、検討し始めてから1~3カ月で契約に至るのがほとんど」

 というから、夏に始めても十分間に合う。

 もっとも、有田さんはこう釘をさす。

「ローン減税など住宅施策の動向で家を買う時期を決めるのは、本当はやめたほうがいい。あくまで自分のライフプランに沿って、しっかりとした資金計画を立てたうえで、買う時期を決めるのが王道です」

 さあ、あなたは、どうしますか。(本誌・首藤由之)

週刊朝日  2021年4月9日号

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首藤由之

首藤由之

ニュース週刊誌「AERA」編集委員。特定社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー(CFP🄬)。 リタイアメント・プランニングを中心に、年金など主に人生後半期のマネー関連の記事を執筆している。 著書に『「ねんきん定期便」活用法』『「貯まる人」「殖える人」が当たり前のようにやっている16のマネー 習慣』。

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